だから刺青も入れた。
(ナメられてたまるか)
私はとんがっていた。
元山口組系組長も驚いた「入所時の裸検診」
話には聞いていたが、入所時の裸検診には驚いた。
裸にさせられ、
「手上げ! 足上げ!」
係官の指示で手を上げ、足を上げ終わったところで、
「尻(ケツ)を上げい!」
何か隠し持っていないか、ケツの穴まで見られた。これが最大の屈辱だとやくざたちは口をそろえるが、どこか醒めていて性格的に適応性がある私は、
(ごっついことするねんやな)
驚きながらも、妙な感心をしていた。
身体検査では刺青や傷痕がないか、男性器に真珠などの異物を入れていないか、さらに知能テスト、適性検査、健康診断などが1日おきくらいに行われる。
歯ブラシの柄など異物を男性器に入れるのは自傷行為として懲罰の対象になるため、事前検査でチェックされるわけだ。
ハンパじゃなくキツい新入訓練
次いで、どんな作業が向いているか、工場配役の適性検査と新入訓練が2週間ほど行われる。紙貼りで袋をつくったり、洗濯バサミをつくったりするなど刑務所の隠語でいう「モタ仕事」をやらせて性格などを見る。ちなみに「モタ」は「モタモタする」から取った隠語で、年寄りにさせる仕事を指す。
このほか、配役を決めるに際して考慮されるのは、(1)職歴、(2)知能指数、(3)心身の状況(持病、血圧、視力、薬物乱用の前歴等)、(4)本人の希望・将来の生活設計・更生の意欲などとなっている。
新入訓練はキツい。
ハンパじゃない。
隊列を組んでの行進から始まり、徹底的にシゴかれる。刑務所内では工場から舎房への行き帰りはもちろん、すべての移動は行進によって行われる。団体で移動する際は二列縦隊。
旧日本軍式の行進で、太ももを90度に上げ、手は地面と水平になるよう大きく振り、
「連続呼称!」
刑務官の号令で、
「オッチニー! オッチニー!」
全員がかけ声をかけながら運動場をグルグル行進させられる。刑務所によっては「左! 右! 左! 右!」というかけ声もある。
延々と行進させられ、
「全体~止まれ」
刑務官の号令でようやく終わる。
この段階で早くも顎が上がるが、本当につらいのはこのあとで、私が初入のころは続けてウサギ跳びをやらされる。膝を痛めるため、いまはスポーツ選手でもやらない。シャバで気ままな生活を送ってきた受刑者たちにとっては拷問である。たしか当時、神戸刑務所は運動場が大小2つあり、大きいほうであれば2周、小さいほうなら5周で、足がちぎれそうになるまでやらされた。
こうして2週間ほどの新入訓練が終わると工場配役となるのだが、どの工場に回されるかは、ムショ生活の善し悪しにかかわってくる。受刑者の最大の関心事で、当然ながら楽な作業がいいに決まっているのだ。