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懲役と工場の仕事

 新入訓練の終わりごろに配役審査会が開かれる。

 所長以下10名ほどの幹部による面接で、事件のことや仕事のことなど、さまざまな質問がされる。いちおう希望する作業も聞かれはするが、それがかなうかどうかは別問題だ。懲役とは字のごとく刑罰としての強制労働であるため、指定された工場と職種は拒否することが許されない。

 当時、刑務作業は大きく分けて以下の3つがあった。

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(1)生産作業

 どこの刑務所も似たり寄ったりで、神戸刑務所は木工(家具の製作)、印刷(カタログなど各種印刷)、洋裁(衣服や寝具の縫製)、金属(溶接や電子部品の組み立てなど)、革工(靴の縫製)などがあり、いちばん多くの受刑者が配役されている。

(2)職業訓練

 模範囚だけが対象となる。電気工事、フォークリフトの運転、自動車整備など職業訓練に資するが、当然ながら誰もがつけるわけではない。

(3)自営作業

 刑務所の運営にかかわる作業だ。図書夫、計算夫、雑役夫、炊事夫、営繕夫などがある。図書夫は本の貸し出しや、受刑者が希望する私物の本の購入、新聞の配布などの作業。

 計算夫は工場における生産実績の報告書を書いたり、受刑者への報奨金を計算したりする。

 雑役夫は受刑者が希望する日用品の購入受付から洗濯物の手配まで、文字どおり雑役にあたるが、舎房や工場のあいだを行き来できることから「鳩」(受刑者同士の伝達)をやって受刑者に重宝がられる。

 炊事夫は受刑者たちの食事をつくる。重労働だが、延長食(特別食)が食べられるという役得がある。

 営繕夫は施設の修理をする。大工や左官などをやっていた受刑者が多い。

 現在は「社会貢献作業」を加えた4つとなっている。

 さらに前項で触れたように、高齢者など普通の刑務作業ができない受刑者が行く「モタ工」、そしてやくざが多く在籍する工場を「サムライ工場」という。