「お金の欠乏」については、あらかじめお金を手にしておくという、きわめてシンプルで効果的な解決方法がある。そうすれば脳の警報は止まり、課題に対して余裕をもって対処でき、パフォーマンスは上がるだろう。これが、お金持ちの子どもが優秀な成績を収め、貧しい家庭の子どもが学校で苦労する理由のひとつだとされている。
欠乏にさらされながら高いパフォーマンスを維持するには、意志のちからで「このままでは死んでしまう!」という警報を止めなくてはならない。貧困家庭に生まれ、社会的・経済的に成功した者は、その代償として心疾患などさまざまな病気を発症して老化が早まり、寿命が短くなるとの不穏な研究がある。過度の意志力を使ったことがストレスになり、健康を損ねてしまうというのだ。
この知見は、貧困をなくすための政策を擁護する強力な理由になる。だが現実には、母子家庭を中心に、日本にもいまだに「お金の欠乏」に苦しめられているひとたちがたくさんいる。
こうした事態に国や行政の支援が必要なのはもちろんだが、それが届かないのであれば、いつまでも待っているのではなく自分でなんとかしなければならない。これが、幸福の土台として「金融資本」が重要になる理由だ。
どんな富裕層も「時間の欠乏」には勝てない
お金が幸福と結びつくのは、ミシュランの星付きレストランで食事をしたり、ブランドものを身にまとったり、豪邸に住んでスーパーカーを乗りまわせるから(だけ)ではない。じゅうぶんな金融資本があれば、「お金が足りない」という警報が鳴らないようにできる。それによって余裕が生まれ、身心にストレスをかけずにパフォーマンスが上がり、成功へとつながるのだ。
それに対して「時間の欠乏」には、この効果的な方法が使えない。誰であれ、1日を48時間や64時間に延ばすことはできない。こうして年収数千万円、あるいは数億円のビジネス・エグゼクティブが、時間に追われストレスに苛(さいな)まれることになる。彼ら/彼女たちの頭のなかには、大音量で「このままでは死んでしまう!」という警報が鳴り響いているのだ。
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