大泉潤氏の公約「新幹線函館駅乗り入れ」は新人候補の思いつきではなかった。函館市民の願いであり、3年前に鉄建公団OB、吉川大三氏が構想を発表していた。工事費用は既存の並行在来線の枠組みと、「はこだてライナー」廃止の経費削減、新幹線乗り入れの線路使用料で回収できそうだ。
費用について
――2015年に函館市企画部計画推進室政策推進課が、市民の意見に応える形で「約1000億円の地元負担になるから困難」と回答しています。「それが75億円とは信じがたい」という声もあります。
吉川 約1000億円は、フル規格新幹線の線路を新規建設した場合です。私の案は既存の複線の片側をミニ新幹線(秋田・山形)のような三線軌条にします。距離が短いのですれ違いはなく、単線で十分です。在来線の複線機能は残るので、旅客列車、貨物列車の運行に支障はありません。五稜郭駅には新幹線も停車させた方が良いので、ここに行き違い設備を設ければ将来の増発にも対応できます。
ただし、車体が大きくなるので、途中駅のプラットホームを削るなど基礎的な改造費はかかります。過去のミニ新幹線の工事費と現地の状況を見込んで約75億円です。もともと除雪のために線路の施工基面幅に余裕があるので、移設すべき障害物は少ないはずです。しかもトンネルはありませんから、車両もミニ新幹線用ではなく、フル規格新幹線の車両をそのまま入れることも十分可能であると確信しています。
山形・秋田新幹線の実際にかかった建設費のデータから推定値を算出
――新在直通ですと、九州新幹線西九州ルートの新鳥栖駅~武雄温泉駅約50kmについて、単線並列型で約500億円、複線三線軌で約1400億円という数字があります。1kmあたり10億円、28億円。新函館北斗駅~函館駅間は約18kmですから、180億円、504億円になります。また、西九州新幹線の整備にあたり佐世保線を改良しましたが、この時の建設費から算出すると600億円以上必要ではないか、という意見がありました。
吉川 西九州新幹線は佐世保線の複線化と高速化、線増用の用地の取得、武雄温泉駅の在来線高架駅、及びこれへのアプローチ高架橋新設、途中の橋梁の新設・改良、防音壁の新設等を行いました。在来線の複線線増工事を行うもので、そのため高額となっています。まったく違う工事の内容を単純に工事延長で比較することは、意味がありません。
函館乗り入れにともなう三線軌条化については、すでに重量貨物、特急列車が走行しており、路盤を強化する必要がなく、橋梁の架け替え等もありません。施工基面も除雪余裕幅があり、新たに広げることもなく、バラストを幅20cm追加で散布し、三線用枕木に交換してレールを敷設するだけです。在来線の通常の枕木交換費用から見ても工事費は妥当です。