私は自分が算出した工事費の検証のため、山形・秋田新幹線の実際にかかった建設費のデータから物価高騰の影響を10%程度加味して推計を行いました。山形・秋田の場合は、車庫や停車場の費用も入っているので、これらを除外すれば推定値75億円は概ね妥当との結論も得ています。
工事費の捻出部分が新たな問題に
――地元紙によると、3月に開催された政策討論会で前市長の工藤寿樹氏と函館商工会議所会頭の久保俊幸氏が「函館~新函館北斗間にミニ新幹線を走らせることで生じる莫大な赤字を負担して、JR北海道が運行するわけがない」と主張したそうです。
吉川 これまでも莫大な赤字という抽象的な表現が用いられてきました。しかし、その根拠が説明されていません。感覚だけでものを言うのは無責任です。「新幹線車両が乗り入れたら赤字ではないか」とも問われますが、「はこだてライナーを新幹線列車に置き換えることと同じだから、はこだてライナーでかかる費用と同じことではないでしょうか。並行在来線の運用と合わせて考えるならば、むしろプラスになる」と思います。
――費用以外に3年前におうかがいした内容から変わったことはありますか。
吉川 工事費の捻出部分です。札幌延伸が現実的になって、並行在来線をどうするかという問題が出てきました。小樽駅~長万部駅間は鉄道廃止、長万部駅~函館駅間は協議中です。貨物列車があるから残すという方針を北海道庁は示しました。そうでなくとも、新函館北斗駅~函館駅間は残さざるを得ないと思います。
工事は単純な割に、工期は4~5年以上かかる
――バス転換という話も出てきそうです。鉄道に比べると、バスの方が国の補助制度は豊富なんですよね。しかも北海道の道路は北海道開発予算という国の制度でめんどうを見てくれますし。
吉川 地元の利用だけで、朝の通勤通学時間帯に500人/時以上の輸送力が必要になります。バスに転換すると、1時間に50人乗りバス10台、10人の運転士が必要です。でも、ほかの時間帯は1人1台で足りるとなると、それ以外の時間帯の9台9人分のコストはどうなるのか。そもそも運転手が不足しているので、民間会社だってできませんよ。
――バスが足りないと言えば、函館新幹線乗り入れ構想の工事中は鉄道が運休するのではないか、バス代行で大丈夫かと地元紙が指摘していました。