吉川 工事は三線軌条用の枕木交換と、レールをもう1本追加するだけです。通常の線路保守業務で行う枕木交換などと同じものです。保守業務は列車間合いや夜間工事で行っていますから、営業列車を毎日止めて行うことはありません。しかし、1日に作業できる距離と作業時間が短く、ベテラン作業員の確保も問題ですし、さらに冬は工事ができませんから、工事は単純な割に、工期は4~5年以上かかると思われます。
前市長は「はこだてライナーはJR北海道が運行する」という約束を取り付けたと言っていたが…
――新幹線がどうかという前に、並行在来線は鉄道で残さなくちゃいけない。
吉川 並行在来線を残すとなれば、その費用と函館乗り入れの投資とセットで考えましょうと。並行在来線をJRから譲渡されるときに、鉄道施設は再整備します。嫁入り支度みたいに。きれいにして引き継ぎます。その時にマクラギの更新など軌道強化もやっていただく。軌道の強化と言っても、いままで特急「北斗」や貨物のディーゼル機関車が走っていましたから、そんなに手を入れることはないはずです。
電車の「はこだてライナー」とディーゼルカーも譲渡されますが、「はこだてライナー」の電車は不要となりますから、電車だけの保守費用も節約できます。道庁は「北海道新幹線並行在来線対策協議会」の資料を公表していますが、総額の結果しか読み取れません。この内訳が分かれば、具体的に節減額の算出が可能となるので、調査を深める必要があります。
前市長の工藤さんは「並行在来線化しても、はこだてライナーはJR北海道が運行する」という約束を取り付けたと言ってました。でもね、JR北海道が函館市役所に提出した文書(平成23年12月13日)には、『札幌開業後(第三セクター移行後)においても、アクセス列車の効率的な運行および利便性が損なわれることのないよう、弊社としては第三セクターからアクセス列車の運行委託を受ける用意があります』と書かれており、委託を受けると言っているだけで、JRが運行経費を含め行うとは何も言っていません。これは約束とは言いません。
もう在来線電車はいらない
――「はこだてライナー」はなくなりますか。
吉川 「はこだてライナー」は北海道新幹線に接続するシャトル列車ですから、新幹線車両が函館駅に乗り入れるなら不要です。そうなると、電車の点検費用、整備工場、在来線側の架線と保守費用が不要になります。「はこだてライナー」の電車は全般検査(車検)のために、苗穂工場(札幌市)までディーゼル機関車が引っ張って回送しているのではないでしょうか。これも不要になります。
ただし「はこだてライナー」は地元のお客さんの利用もありますから、それは別途、地元の方に使いやすい時間でディーゼルカーを走らせます。特急「北斗」も新幹線に役目を移行し、「はこだてライナー」がなくなることで、ダイヤに余裕が生まれ、在来線旅客列車と貨物列車の運行を維持できます。新幹線の方は上下それぞれ30分間隔程度なら単線でも運行可能です。新幹線車両の行き違い設備を設ければ、さらに多様なダイヤを組めます。