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 ああいう犯罪は、騙しのプロがあの手この手で、人間の心理のスキを巧みに突いてくる。騙された側は不運な条件が重なっただけで、何も悪いことはしていない。だから自分を責める必要はないんだよ。

お金はもう返ってこない

 はっきり言って、お金はもう返ってこない。あなたにとって、今いちばん大事なのは「二次被害」を防ぐことだ。思い悩んで心や体の病気になったら取り返しがつかない。奥さんがよそよそしいっていうのは、きっと思い過ごしだよ。落ち込んでいるあなたにどう接していいか、戸惑ってるんじゃないかな。

 息子夫婦に隠したままだと掛け替えのない「大事な宝」まで失うことになる 息子夫婦にも、ちゃんと話したほうがいい。慰められるか責められるかは、相手次第だからわからないけどね。責められたとしても、いちおうしおらしい態度は取りながら、腹の中では開き直ってればいいんだよ。悪いのは騙すほうなんだから。

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毒蝮三太夫さん ©文藝春秋

 このまま息子たちに隠したままだと、どんどんギクシャクするだろうね。奥さんだって、息子夫婦と会うたびに隠し事の片棒を担がされて気の毒だ。家に遊びに来てくれても楽しく話せなくて、だんだん実家に寄り付かなくなったら、掛け替えのない「大事な宝」まで失うことになる。勇気を奮って「じつは……」と伝えよう。

被害者への声のかけ方

 逆にもし身内がオレオレ詐欺に遭ったとしても、絶対に責めちゃいけない。責めたところで、落ち込んでる被害者を余計に追い詰めて「二次被害」を招くだけだ。「ケガがなくてよかったよ」ぐらいのことを言って慰めてあげよう。

 もちろん、反省は大事だ。二度と同じことを繰り返さないように、どういうことに気を付けるか話し合っておいたほうがいいだろうね。あやしいなと感じたらすぐ電話を切るとか、息子に連絡するとか、そもそも知らない番号の電話には出ないとか。

 最近は年寄りだけじゃなくて、若い世代の被害も増えている。誰も「自分は大丈夫」なんて言い切れない。みんなが気を付けなきゃいけないんだ。それにしても腹が立つよな。あんなことをしてるヤツらは、絶対にいい死に方しないよ。