中高年への愛ある毒舌で人気を集める毒蝮三太夫さん(87)は、人呼んで「ジジイ・ババアの友」。このたび上梓した『70歳からの人生相談』(文春新書)では、読者からの悩み相談に乗りながら、老後を機嫌よく暮らすためのヒントを授ける。
ここでは本書を一部抜粋して紹介。「乏しい貯金と年金で今後も暮らしていけるのか、将来が不安です」という74歳男性に対する、毒蝮さんのアドバイスは?(全2回の2回目/最初から読む)
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【お悩み】何年か前に「老後2000万円問題」が話題になりました。私は焦りました。そんな貯金、持っているわけがありません。リタイアして年金生活に入っているので、貯金を増やすことは不可能です。
幸い、今は自分と妻の年金で何とか生活できているし、今のところ健康なので、わずかな貯金を減らさずに済んでいます。だけど、物価がどんどん上がっているし、このままでは将来が不安です。もし貯金がなくなったら……と毎日心配しています。50歳の息子がいますが、息子には息子の生活があるので頼るわけにはいきません。心穏やかに老後を過ごしたいのに、それは不可能なのでしょうか。(74歳、男性)
少しでも稼げば穏やかな気持ちになれるよ
【毒蝮さんの回答】俺も以前『老後の資金がありません!』って映画に出たから、こういう心配はよくわかる。「2000万円」って金額が独り歩きしているところはあるけど、仮にたくさん貯金があっても、心穏やかに老後を過ごせるとは限らない。
このあいだ知り合いの鍼灸師の女性が言ってたんだけど、20年ぐらい面倒を見ている年寄りがいるんだって。もう100に近い歳のジジイで、ビルを3棟ぐらい持ってる。奥さんは死んじゃって自分のマンションに独り暮らしで、通いの家政婦さんにいろいろ世話してもらってるらしい。
鍼を打ちながら話をして、「今、何が欲しいですか?」って聞いたら、その金持ちのジジイは、どう答えたと思う? 「欲しいのは金だ」と言ったんだってさ。その彼女は耳を疑った。お金は十分に持っているはずで、しかも100歳に近い老人から、まさかそんな答えが返ってくるとは思わないからね。