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 私事ですが、15年くらい前に北のネパールから南のインドへ陸路で行ったとき、インド側で危険運転の車に乗ってしまったことがあります。インドのコンパクトな国産車「TATA」に、前部座席に4人、後部座席に4人、トランク内に1人、屋根の上に1人、計10人が乗ったんですが、とにかく運転が危なかった。

 そのときに後部座席に乗っていた一家が日本語が達者なネパール人で、彼らが日本語で「運転手はヤク(麻薬)をやっていて危ない。私達がドライバーに『ゆっくり、言われたとおりに走れ』と説明します」と言って、なんとかインド側の街についたんですよ。で、「日本ではどこに住んでいますか?」と聞いたら「ハイジマ」と答えたんです。つまり、拝島には少なくとも2000年代からネパール人がいたようです。

「お酒奢ってくれますか?」ネパール人のおじさんに懇願される

 ある日、拝島のあるネパール料理屋で食事をしようとしていたところ、日本に来て間もないネパール人のおじさんが、つたない日本語で愛想よく話しかけてきたことがあります。これはネパールにいるような異国体験だと思っていろいろ話してみると、家族はいるけど単身日本に来たばかりなど、いろいろと身の上を話してくれました。

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 食べ終わったあと、なぜかメニューの金額より多く請求され、まあ楽しかったしチップのつもりで多めに払ったんですね。そのあと店のレビューを見たら、「計算がおかしいのか、会計が100円高かった」というレビューもありました。

 店を出るとネパール人のおじさんが「インドネシア人が働く店がある! 次はそこで飲もう!」と言うものだからついていくと、日本人が経営する普通の飲み放題居酒屋で、ただおじさんが飲みたかっただけで腰砕け。その後、「コンビニいきますか? 一緒に行きます」と言うので一緒にコンビニへ行ったら、「お酒奢ってくれますか?」と懇願してきました。

駅前ネパール旅行ができる拝島

移民が増えれば、外国でしかできない経験を事前に知ることも可能に

 そんなに稼いでなさそうなのでチューハイを奢ったのですが、ネパールを旅行したときにも、ガイドにこんな感じでいろいろ奢った(奢らされた)なあと思い出したものです。ネパール旅行では行く先々で、ビールや菓子などいろいろとねだられました。拝島ではネパールさながらの体験ができたということですね。

 今後、日本で移民が増えれば、こんな経験をする人が増えるのかもしれません。そういう経験の可能性を事前に知ることも、多文化共生のひとつなのかもしれないなと考えさせられました。

写真=山谷剛史

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 著者の山谷剛史氏の最新刊は、東京や大阪、愛知などを舞台に、スマホを片手に外国人コミュニティを探し出し、外国人ばかりの店で料理を食べて買ってお祭りに参加する“ジェネリック海外旅行”の最強マニュアル『移民時代の異国飯』。星海社より発売中です!