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将棋指し夫婦の我が家。夫はハムスターを飼い始め、私は体力をつけることを決意した

将棋指し夫婦の我が家。夫はハムスターを飼い始め、私は体力をつけることを決意した

2023/05/18
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「ママ、こっちきて!」

 いつもより少しムスッとした様子で次女から声をかけられて行ってみると、紙袋から何かを握りしめ、サッと拳を前に出してきた。

「いつも、あそんでくれて、ありがと」

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 あまりの棒読みっぷりに「うん……? どういたしまして……」と困惑しながら受け取ったそれが、幼稚園で子ども達が自由に作った母の日のプレゼントだったということが判明したのは、そのあとに行った公園でママ友と話してからだった。

次女がくれたお花の折り紙と指輪 ©上田初美

 プリンセスごっこが大好きで、いつもニコニコ笑顔で定評のある次女が、何ならやや切れ気味で渡してきたのが、うちの子どもらしいところである。

毎日育児ばかりしている夫はいつにも増して下がり眉が…

 子ども達の進級に伴う忙しさも、少しでも多く楽しもうと意気込んだゴールデンウィークの熱も落ち着き、気がつけばベランダで育てているミニトマトが青い実を付け始めた。

 初夏と呼ばれる、いろいろなことが一段落ついたこの時期は、どうにもやる気が出ない。

 特に4月・5月は順位戦が休みで対局が少なく、毎日育児ばかりしている夫はいつにも増して下がり眉が下がっている。

 そんな夫が、ある日突然思い立ったように、物置に眠っていた飼育ケースを洗い、自転車を走らせ、ハムスターを大事そうに抱えて買ってきた。少し前から「飼おうかな」とは言っていたけど、「何でいきなり今?」と聞いたら、「誕生日プレゼント」と言う。

 鬱々とした日々を打破するために、新しいことを始めようという気持ちもあったのだろうか。こうして、36回目の誕生日を迎えた夫が自分のお祝いに買ってきたハムスターは新たな家族となり、夫だけでなく、家族みんなの心を癒やしてくれている。

長く続けていくためのモチベーションをどう高めていくか

 将棋は子どもの頃にやっていた勉強方法と、プロになってからの勉強方法に大きな違いはない。もちろん私が子どもの頃に将棋ソフトを使った勉強方法はなかったため、その変化はあるが、それはプロになったから変わったというよりも時代的な変化だ。根本的に、将棋は同じような勉強方法を、自分に合ったバランスを試行錯誤しながら、何十年とコツコツ続けていく。

 突然の誕生日ハムスターには驚いて、ここに書いたり、ママ友に話したりといろんな所でネタにしたけれど、長く続けていくためのモチベーションをどう高めていくかは、とても大事なことだ。