一方で坂本は細野の人となりについてこう語った。
〈細野さんは日本のロック・ポップス界において希有なほど音楽性の高い人で、いまだに変化し続けている。自分にとって面白いことがどんどん変わっていくだけで、変わってやろうと思ってるわけじゃないんでしょうけど、ほっとくと変わっちゃうんです。そこは僕も似てますね。すぐに飽きて他のことをやりたくなってしまう。ひとつのことを長く探求したほうがいいんじゃないかと、自分に関しては反省することもありますけど、細野さんはどうなんだろうな(笑)〉(*22)
そして坂本は、細野が『HOSONO HOUSE』を大胆にセルフリメイクしたアルバム『HOCHONO HOUSE』をリリースして間もなかったこともあり、次のように言った。
〈『HOCNOHO HOUSE』は音響的にすごく刺激されるアルバムでした。新曲がないというのは残念だったけれど。やっぱり曲ですよね。『HOSONO HOUSE』に書かれたようないい曲をこれからもどんどん書いてほしいです。書ける人だから〉(*23)
『HOSONO HOUSE』との関連で言えば、とりわけ印象深い光景がある。
細野晴臣と坂本龍一、確執のあったふたりに穏やかな空気が流れ始めた
2013年12月に行われたジョイント・ライブ「細野晴臣×坂本龍一」は、細野と坂本がふたりきりでステージに上がる2度目の公演だった。1度目は2011年12月、坂本のピアノ・コンサートに細野がゲスト出演したときだったが、それ以前には長いつきあいがあったにもかかわらず、ふたりきりで演奏を行なうことはなかった。
そもそもYMO時代のふたりには音楽上の確執があった。そしてふたりのあいだに立ち、自然とバランスを取るかたちになったのが高橋だった。
〈それがたまにはみんなでご飯を食べようって言って、体の具合はどうなのとか、そういうことをざっくばらんに言い合えるようになっていったんです、2000年代になって。やっぱり尊敬している部分があるし、細野さんには素晴らしいと思う曲が何曲もあるからね〉(*23)
ふたりはこの日、細野がギターを弾き語り、坂本がピアノを伴奏してライブを始めた。1曲目に演奏した「恋は桃色」は坂本からのリクエストだった。彼は言う。