かつて覚醒剤の売人として、ヤクザ業界で名を売った木佐貫真照氏。覚醒剤の酸いも甘いも知る氏が、日本で最もクスリを買いやすい街・西成で更生支援活動を始めた理由とは?
西成で暮らす人々をインタビューした、フリーライター・花田庚彦氏の新刊『西成で生きる この街に生きる14人の素顔』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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西成といえば覚醒剤と、その道を通った人間なら誰しもが答えるほど、西成と覚醒剤は表裏一体である。
なぜ、西成が覚醒剤を24時間買えるような街になったのか。それは鉄火場と呼ばれる博打が夜通し行われている常設の博打場が数多くあったのと、労働者が朝早くから働き、働く時間の前に覚醒剤を体内に入れて元気を付けていったのも大きな理由であろう。
映画では、博打をする場所の別部屋に覚醒剤が山積みになっている描写をよく目にする。実際はそんな部屋は無いが、覚醒剤が用意されていたのは事実である。それは西成に博打場を持っていたある人間が過去に筆者に語ったからだ。
この項で取り上げるのは、西成に在住し“シャブ屋”としての経験から本を何冊も上梓し、現在は薬物更生支援“日本達磨塾”を主宰している木佐貫真照氏である。
ヤクザをやるつもりで大阪に出てきた
――今まで本は何冊出されていますか?
「6冊とコミックを2冊。計8冊です」
最近では、漫画配信サイトである“めちゃコミック”で、過去に発売された『実録シャブ屋』の漫画版『実録シャブ屋 覚醒剤の虜になったオトコとオンナ』を配信し、大きな話題となっている。
――経歴を教えてもらえますか?
「小学校卒業。中学校は2年まで。初等佐世保少年院、福岡中等少年院、佐賀少年刑務所、それで20歳で鹿児島刑務所。それから立て続けに計12回入っています」
――全部シャブですか?
「いや、最初は恐喝、窃盗。それから傷害、暴行とあって、大阪に来てからは覚醒剤ばっかりです」
――シャブ屋として有名じゃないですか。そのきっかけは?