戸田 もともと父親が母親に一目惚れをして、母親は「俺と結婚してくれないと死ぬ」と父親に脅されて結婚をしたそうなんです。本当かはわかりませんけど……。それで結婚をしてみたら、思うようにいかないことが多くて。
パートに出ようとしても社会にうまく馴染めず、すぐに辞めてしまったり。家計を管理するのは全部父親だったから、母親が自分で自由にできるお金がほぼなかったんですね。何か必要な出費があったときに、何日もお願いしてやっと5000円をもらえるような生活だったようです。
おまけに田舎なのに車の運転もできず、移動も父親がいるときしかできないから、家にいることしかできない。苦手な家事や育児をすべて1人でやっているのに、父親の許可がないと何もできない状態で、不満が溜まっていたんだと思います。
――その不満の矛先が戸田さんとお姉さんに向いていたのでしょうか。
戸田 そうですね。でも感情のアップダウンが激しいので、たまにものすごく褒めてくることもあるんですよ。「あなたが一番可愛い」「本当に頭がいい」とか「一番大事」というような。本人は多分、母親として子どもを愛しているつもりではあるんです。それが愛情なのかどうかはわかりませんけれど。
今では「母親も未熟だったんだな」「親としてよくないな」とキッパリ思えるんですけど、当時の私たちからすれば、機嫌次第でどこで怒るかわからない、どこで否定されるかわからない状態だったので、姉も私も母親の機嫌を過剰に窺って家での振る舞いを決めていました。
父親は気性が荒く、「たまにすごく怒鳴る人」だった
――戸田さんとお父様の関係はどうでしたか?
戸田 父親は夜中に仕事で家にいなかったので、昼夜が逆転していて生活はすれ違っていました。接する機会が極端に少なかったため、印象としては「たまにすごく怒鳴る人」でした。気性がとても荒い人だったので。
ただ、それが私の人間性に大きな影響を与えたかというとわからなくて。なので当時、父親と生活リズムが合っていたら、多分もっと色々トラブルがあったと思います。
家庭の中でのパワーバランス的には母親のほうが強かったんですけど、なんというか、いびつな家庭でしたね。
――お父様の言うことが絶対というわけでもなく、いわゆる家父長制的な家ではなかったんですね。