文筆家・映画監督として活躍する、元AV女優の戸田真琴さん。新興宗教を信仰する母親の元に生まれ、機能不全家族のなかで育った過去を持つ。そんな彼女が、自身の生い立ちやAVデビュー・引退の経緯などを描いた私小説『そっちにいかないで』(太田出版)を5月27日に刊行した。

 新興宗教家庭に生まれた戸田さんは、幼い頃から様々な“生きづらさ”を抱えて過ごしていたという。いったい何が、彼女の“生きづらさ”を生み出してしまったのか。貧困問題や機能不全家族などを取材するライターの吉川ばんび氏が、詳しく話を聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)

文筆家・映画監督として活躍する戸田真琴さん ©杉山拓也/文藝春秋

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母親の価値観により「婚前交渉禁止」と決められていた

――戸田さんは、新興宗教家庭で育ったことを公表されています。いわゆる「宗教2世」ということでしょうか。

戸田真琴さん(以下、戸田) 母親が熱心な宗教2世で、私は実は3世なんです。うちの問題って、おそらく宗教2世的な問題と、母親と父親自身の人間性の問題とが混ざってキツくなっていたのが実態だと思うので、純粋な「宗教2世問題」かというと違うのかもしれないんですけど。

 例えば私の家は「婚前交渉禁止」だったんですが、それは宗教的な要因というより、母親の価値観的な部分、今思うと母親には強いミサンドリー(男性への嫌悪)があったと思うんですが、そこからくるもので。

©杉山拓也/文藝春秋

小さい頃は同じ宗教の子としか遊ぶことを許されず

――複合的な要因があるということですよね。

戸田 はい。そもそもは祖父母が宗教に入っていて、その影響で母親がかなり熱心な信者になりまして。父親は「母親と結婚したいから宗教を受け入れた」という形だったので、彼自身はそこまで熱心な信者というわけではないんですけど。

 でも母親の宗教に対しての熱みたいなものに違和感を持っていないというか、「母親の言うことは全部オッケー」みたいな感じだったんです。

――お母様が熱心な宗教信者だったことで、ご家庭にどんな影響がありましたか。