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戸田 そういう現場じゃないと、性的な経験をするのが難しかったんだろうなとは思います。逆に言うと、そうやって仕事を繰り返していくなかでどんどん自分自身が無味無臭になっていく感覚がしたというか。

「あ、特別におうわけじゃなかったんだ」「ちゃんと洗えば大丈夫だったんだ」という意識が芽生えていって。だから今は、そんなに気にせず済んでいるんだと思います。

©杉山拓也/文藝春秋

いつの間にか母親と似たタイプの人と付き合いが深くなるように

――幼少期の経験による価値観から抜け出すのはなかなか難しいですね。

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戸田 そう思います。私は他者から同意を求められるとすぐに従ってしまうというか、「それは違うよ」がどうしても言えないところがあって。色々と発信したり活動したりしていると「意志が強い人間」だと思われることが多いんですけど、実はそうではなくって。

――それは意外ですね。

戸田 他者と1対1で話すときに自分の意見で話すことってほとんどないんです。とにかく向こうが求めている同意に、自分がどう思っていようと同意する、というコミュニケーションしかできないんだな、と思うことがよくあります。

 相手にただ同意して「ああそうだよね、つらかったよね。あなたは悪くないよ」ということを繰り返していくと、いつの間にか母親と似たタイプの人と付き合いが深くなることが多くなってしまって。

 するとこちらも余計に同意し続けるしかできなくなって、あるとき「自分の意見」が垣間見えてしまったときに「裏切られた、あなたはそんな人だと思わなかった」という風に関係性が破綻してしまうみたいなことが……。

©杉山拓也/文藝春秋

――ただただ同意や同調をしてくれる相手がほしい人からすれば、近づきやすいというか。

戸田 そうですね、真夜中とかに連絡があっても絶対返してしまったり、次の日が早いのに相手の愚痴をずっと聞いてしまうとか。「ちょっと今日は寝るね」とか「ちょっとごめんね」がいまだに言えないというのは、自分にとってかなりの生きづらさになっているように思います。

――宗教団体の方から、今でも戸田さんご自身に勧誘があったり接点があったりはするんでしょうか。