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戸田 そうです。納得できないので、母親ならわかってくれるだろうと「私はテスト勉強をしたいと思ったから断ったのにあんなに怒るなんて、変じゃない?」と言うと、母親は「いや、その人たちはいい人たちだよ。あなたのために言ってくれてるんだよ」と返してきたり。

 そういう「あれ?」と思うことが少しずつ増えていって、不信感みたいなものが次第に出てきてしまったんです。

©杉山拓也/文藝春秋

 それが積み重なって、だんだんと母親や父親の主張に対抗できるようになっていって。自分の性格上、「言わずにいること」ができないので。「これ変だよね」と思ったことを1つ1つ言っていったら、親から次第に「ヤバイやつ」みたいな扱いになって。でも「ヤバイと思われたほうがいいんだろうな」と思うようにもなって、家の中で理解されることは諦めました。

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母親から「臭い!」と言われていたことが“生きづらさ”に

――そういう子ども時代のなかで、当時、何か支えになっていたものはありましたか。

戸田 私、ノートを常に持っているようにしていて。すべての「これは変じゃないか」と思ったことが誰にも伝わらない、逆にすごく怒られたりするようなことが続いたりすると、一旦他人に伝えようとするのをやめる方向にいくんですね。

 でも、考えるのをやめることはできなくって。そうすれば、なかったことになってしまうから。

 だからそれをノートに書くんです。単純に「この世の中はどうなっているのか」とか「自分が何を思ったのか」と探求することが自分にとっての喜びなので、自分に向けて書く。

©杉山拓也/文藝春秋

――ノートの中の自分と会話をして思考整理をしているような感覚でしょうか。

戸田 意識的にイマジナリーフレンドみたいなものを自分の中に作っていて。そんな風にしていると助かる瞬間があるというか、自分の頭の中が行き止まりにならずに済んだんです。

 自分に話しかけて、同意してもらったり、叱咤してもらったり、そういうことをとにかく繰り返していました。それが一番の支えだったと思います。

――戸田さんはご自身が育たれた環境によって今も苦しんでいるものや、抱えている生きづらさ的なことがあったりするのでしょうか。