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戸田 父親が母親のことをすごく好いている、という家だったんですよね。それがあったからか、私、例えば親が離婚して悲しんでいるクラスメイトや、お母さんが亡くなってしまった子とか、そういう人たちより恵まれている環境で育っていると思っていたんです。だからこそ「文句を言ってはいけない」といいますか。
でも母親は「父親となぜ離婚できないのか」という理由を、幼い頃から私と姉にひたすら話をしている状態だったんです。
幼少期から母親の顔色を窺っていた影響で、他人にNOが言えない
――お母様とご姉妹は、少し共依存のような関係だったのでしょうか。
戸田 幼い頃はそうだった気がします。母親が誰かに肯定してもらいたいとき、それをできる人間があの家には私と姉しかいなくて。母親はあの家が世界の全てみたいな状態だったので。
私と姉もまた、母親が喜ぶことは「我先に」とやろうとしました。あと昔は「母親が承認したもの」以外は「好き」と言っちゃいけない、と思っていましたね。例えばCDショップで音楽が流れていて「このCD欲しいな」と手に取っていたりすると、母親が横から「そんなダサいのを聴くんだ」みたいなことを言うんです。
――そういうとき、戸田さんはどういった反応をするんですか。
戸田 母親の顔色が少しでも曇っていたら、とっさに「いや、私もすごいダサいと思う」と返してしまうんです。考える間も無く反射的に「あっ、これは不正解なんだ」と思って「全然好きじゃないよ」とアピールしたり、「ママと同じものを好きだよ」と言ったり。
全てのことにおいて、母親に同意しないと「変」と言われるので、必死に取り繕って。
――それは今でも、反射的にやってしまうことがあるんでしょうか。