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戸田 もともと、大学の進学先を考えるときになんとなく「映像をやりたい」と思ったんです。音楽がずっと好きで心理的に頼っていた部分があって、帰宅中に音楽を聴いて「なるべくあの家に帰りたくないな」と思いながら、ちょっと遠回りをして家に帰ったりするときに見ていた景色が、自分にとっては映像として、映画みたいに頭に残っていて。

「そのときに1人で見ていた景色みたいなものを撮りたい」という意識があったので「なんとなく自分は映像をやるのかな」と思って、映像系の学校に進学しました。

©杉山拓也/文藝春秋

AV女優としてデビューした理由

――学生の頃にはすでに「映像をやりたい」と思っていたんですね。

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戸田 はい。ただ、さっきも少し話したのですが「明日も自分が生きている」という意識がすごく希薄で。自分がどう生きていったらいいかわからないまま大人になって、ボーッと映像を撮るみたいな生活をしていて。そんな生活の中で一度は「これを仕事にするのは無理だな」と漠然と思ったんです。

「自分が普通に生きられるわけがない」という感覚が自分の中にはずっとあって、ただ目の前のことに一喜一憂して、ただ見えているものを映像で撮って、編集をして、としていたら、いつの間にか友達はみんな就活が終わっているような状況で。

――それから映像のお仕事は一度あきらめたのでしょうか。

戸田 そうですね。でも奨学金は返済しないといけないし、生活もしなきゃいけないし。AV女優としてデビューしたのは、そういうのが理由のひとつとしてあったんですが、他にも色々あって。

©杉山拓也/文藝春秋

 育った環境の影響なのか、性的なコンプレックスがあったり、過剰に男性を恐れてしまっているせいで、男性から好かれても思いに応えることができないということがずっと続いたんですね。その度に「自分は人を傷付けてしまったんじゃないか」とか「自分が性的に踏み出せないことによって、他者を深く傷付けてしまうんじゃないか」という思いが脳裏をよぎってしまうんです。

――自分のせいで相手を傷付けてしまった、と思ってしまったんですね。