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戸田 はい。そういう意識が重なった先で、コンプレックスに向き合おうとした結果、AV女優としてデビューをしたんですね。「自分の人生は一度行き詰まったので捨てよう」「戸田真琴という名前でデビューして、なるべく自分の思う素敵な女性であろう」と、そして「素直で従順な人であろう」と思って最初は活動をしていました。「とにかくファンが喜ぶことしか言わない」みたいに。

 でも、やっぱりブログで言葉を書けば書くほど、自分の思想が漏れ出してしまうんです。それが少し普通の人と違うところがあるというのもバレてしまうし、それが「AV女優として望まれないもの」であることも感じていました。そうすると今度はもう「ただのかわいい女の子」で売り続けることができなくなっちゃうんですよね。

©杉山拓也/文藝春秋

「映画を撮ってみてよ」という言葉を無視できなかった

――画面の中にいる存在に「意思がある」と思うと急に推せなくなる、みたいな現象でしょうか。

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戸田 そうですね。自分の「商品としての価値」が下がってきたとなると、他の部分の価値を上げるしかなくて。そのとき、自分の意思だけで、1人で誰にも迷惑かけずにできるのが文章だなと思って。それで、たくさん文章を書くようになったんです。

――それから文章のお仕事が来るようになったのですね。

戸田 はい。私、その頃、映画をよく観ていたので映画の感想をブログで書いていると、次は映画に関連した仕事がくるようになって。そうなると今度は「映画を撮ってみてよ」と言われるようになったんです。

©杉山拓也/文藝春秋

 私はずっと映画を撮りたかったので、その言葉を無視できなかったんですよね。でも、AV女優をやりながら映画を撮ることって、とても難しいなと思って。

――それは、スケジュール的な話なのか、それ以外の理由かどちらでしたか。