戸田 はい、私の場合はいつの間にか解決していたから辞めて、今に至るという感じですね。
機能不全家庭では、性教育どころか普通の教育すらされていない
――AV女優を辞めて、作家としての活動や映像を作る活動をされている戸田さんの、今後の展望や「これに挑戦したい」みたいなことがあれば教えて欲しいです。
戸田 色々と発信していきたいことは自分の中にあるんです。それが形になったものの1つが、5月27日に発売される私小説で、AV女優になる以前のこと、つまり家庭環境のことや幼い頃からの話を書いています。
例えば自分が強く感じていた性的なコンプレックスも、性教育を学校教育の場でもっとしっかりと教えられていれば、少し変わっていた部分があったと思うんです。機能不全の家庭に生まれた子にとって、性についての知識はまともに得ることが難しいのが現状です。そういう家庭では、性教育どころか普通の教育すらされていないことが多いので。
性教育が家庭に一任されていること、ほとんど学校では教わらないことは、何が正しいのかわからない子どもたちにとってはコンプレックスをより増強する原因になると思います。そうした課題について、何らかの形で若い人に届くように発信したいと考えたりしています。
――ありがとうございます。戸田さんのご家庭でもそうだったように、宗教2世問題(注:正確には戸田さんは3世だが、母親が2世であり信心深い人だったため家庭で大きな影響があった)の当事者の中には大変苦しんでいる方も多いと思います。この問題について、どう思われますか?
戸田 私自身、何かコミュニティを作りたいと考えたこともあるんですが、宗教の問題は、その宗教によって苛烈さが変わってしまう上に、団体側とのトラブルになる例も非常に多いんですね。そのため、何か行動を起こすことも難しいですし、発信する側としても、繊細に扱っていく必要があると思っています。
以前、私とは別の宗教の2世として困っている人と出会ったとき、共感といいますか、心が助かる感覚がすごくあって。だから、他の人々にもそういった機会を少しでも作ることができればいいなと。たとえ匿名でも話し合えたり、気持ちを交換できるような場所が作れたらいいなと思います。
――「ピア・カウンセリング」(互いに平等な立場で話を聴き合い、きめ細かなサポートによって地域での自立生活を送る手助けをする場)とも少し違いますが、「当事者同士で困りごとや感情を共有できる」という点では、似ていますよね。