「こんないやらしい漫画を読んでるなんてお母さんガッカリだわ。軽蔑する」
当時、同じマンションに住んでいる1つ年上の幼馴染の女の子が「この漫画、お母さんと一緒に読んでるんだけど面白いから読んでみてよ」と言って、その漫画を20冊ほどまとめて貸してくれたことがありました。その子の家庭とは、互いの父親をのぞいてほとんど家族ぐるみの付き合いで、最初に母親同士が仲良くなり、それぞれの子どもが同年代だったことから、互いの家を行き来するような関係になったのです。
その漫画はおそらく成人女性向けでしたが、直接的な性行為などの描写はまったく無く、あっても2人で同じベッドで寝転んで話している様子か、キスシーンくらいのものです。
せっかく貸してもらったものの、まだ幼かった私にとってはあまり興味の持てる内容ではなかったため、1冊だけ読んで、残りは紙袋から出さずにいました。
自分の知らない友達が増えることに拒否反応を示す
そんなとき、突然仁王立ちをした母親から「あんたこの漫画、何?」と聞かれ、いやらしいと罵倒され、「そんな風に育てた覚えはない、ショックだ」とまで言われたのです。
母親は、女の子が「読んでほしい」と私に漫画を貸してくれたときに隣で微笑んでいて、私が自分から「貸してほしい」とねだって借りてきたわけではないことを知っていたはずでした。
だからこそ、余計にこのできごとが深い傷となっているのかもしれません。
母親は、私が母親の目の届かないところで交友関係を築くのをとにかく嫌いました。中学生くらいになって以降、大学生になっても、母親の知らない友達が増えると、母親は私が外出するのを嫌がり、それに対して苦言を呈すと「自分の子どもがどんな子と会ってるのかわからないから、不安になるのは当然だ。どうしても遊びたいなら、私に会わせろ」としつこく言いました。
母親は、私が異性と関わることに対して、特に拒否反応を示していました。おそらく、年頃になった私が異性と仲良くなることで、心の拠り所としている娘が自分の元を去って行ってしまうのが怖かったのだと思います。
娘を唯一の拠り所とするがゆえに
大学生の頃、40度の高熱が出て、帰宅と同時に玄関で倒れたことがありました。なんとか声を絞り出して、母親に「お願い、水と体温計を持ってきてほしい」と伝えると、母親は鬼の形相で「なによ、なんの当てつけなのよ! あんたが外をほっつき歩いてるから悪いんでしょ!」と私を怒鳴りつけました。
母親は昔から、私が「しんどい」と言ったり、弱音を吐いたり、体調が悪そうにしているのを見ると、私を攻撃せずにはいられない様子でした。これはおそらく、母親が「一番つらいのは自分である」という思考を強く持っていて、そこから得られる「自分は誰よりもつらいのに頑張っている」という肯定感こそが彼女を支える一本の柱のように機能していたためだと考えられます。