貧困問題や人権、家族の問題などを取材する作家・ジャーナリストの吉川ばんび氏(31)。吉川氏は「機能不全家庭」で育ち、そのトラウマに苦しめられて「精神疾患」を患った当事者でもある。いったい彼女は、どのような家庭で育ち、どんな苦しみを味わって生きてきたのだろうか。
ここでは、吉川氏が自身の実体験をもとに貧困・虐待家族のリアルを綴った著書『機能不全家庭で死にかけた私が生還するまで』(晶文社)より一部を抜粋。アルコール依存の父、過干渉の母、家庭内暴力の兄という機能不全家庭で育った彼女の過去を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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壊れていく家庭のひとつのあり方
私が生まれ育った家庭は、いわゆる「機能不全家庭」でした。
しかしながら、自分の家庭が「普通」でないことに気が付いたのは、思春期以降のことです。簡単にいえばうちは、父親が家庭や育児に不干渉で、母親が「父親の分も自分が責任を持って子どもを立派に育てなくてはならない」といった強迫観念からくる過干渉の傾向にあり、おまけに長男である兄が非行に走り、家庭内暴力や反社会的行為をくりかえすといった「典型的な機能不全家族」だったのです。
父親は気に入らないことがあるとすぐに仕事を辞めてしまう癖があり、退職と転職をくりかえしたり、ある日突然、母親になんの断りもなく会社を辞めて帰ってきたりすることがよくありました。ときには1年近くも無職のまま過ごすこともあり、転職活動をする様子もなく、一家の貯金が底をついていることを母親からせっつかれても返事すらしないほど夫婦関係は冷え切っていました。
貯金が底をつくたびに祖母にお金を借りていた
無職期間の父親は引きこもりで、近くのコンビニにたまに行く以外は外に出ることがほとんどありませんでした。おまけにアルコール依存気味であったため、寝ているとき以外は常に酒を飲みながらテレビを見るだけの生活を続けていたのです。