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俳優としての葛藤と息苦しさ

井上 俳優あるあるだと思うんですが、仕事をする上で、やりたくない表現もやらなきゃいけないんですよ。何のために呼ばれたのかわからなかったり、ただの客寄せのために立たされているんじゃないかと悩んだりと、商業の構造に潰されてしまう役者もいます。そういう人も現場もたくさん見たし、僕自身も経験しました。ずっとそこだけで息をするのは、僕には難しかったです。

©杉山秀樹/文藝春秋

──自分のやりたい表現をぶつけられる場所が必要だ、と。

井上 作品をつくる上では監督が一番大きなパーツかもしれませんが、台本を読んでどういう芝居をするか色付けするのは、やっぱり俳優。自分が楽しみながら演じられる環境を、自分で整えてる感じですね。

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 例えば、泣きのシーンがある時に、俳優側が「ただ涙をボロボロ流す顔だけを映すんじゃなくて、涙がこぼれ落ちるまでの過程をしっかり押さえてほしい」と思ったとします。でも、それが相談できる環境すらない場合も多々ある。基本的に俳優は、監督やプロデューサーの考えた通りに演技をやるしかないんですよ。

 もちろん現場で色々な判断はあるかと思いますが、俳優の考えを無視して撮るのも違う気がして。僕が主体の制作現場では、芝居のプランもみんなで考えたいし、俳優側の不満や要望もきちんと聞ける現場にしたいですね。(#2に続く)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。