まさかこの男が主役になるとは――。

 昨年、「ナスD」が大きな話題となった『陸海空 地球征服するなんて』。この番組が抜け目ないのは、ナスDの旅が盛り上がっている最中も次の一手を模索していたところだ。そのひとつが、西村瑞樹による「激安!いいね!アース」。タイや台湾を舞台に、1日1度、インスタグラムに投稿し、それについた「いいね!」の数に応じて旅行資金が支給されるというもの。西村は番組MCである小峠英二の相方。コンビの中でも目立たない、いわゆる「じゃない方芸人」だった。だが、昨年あたりから、お笑い濃度の高い番組を中心に、彼の“ヤバさ”がにわかに注目され始め、「奇人」などと呼ばれるようになっていた。「いいね!アース」はそんな彼のヤバさを如実に浮き彫りにし、番組の主役のひとりに押し上げたのだ。

「キングオブコント2012」で優勝したバイきんぐ。「じゃない方芸人」だった西村瑞樹(右)だが、『陸海空』で存在感を増してきた

「ザ・人間」

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 伊集院光はこの企画での西村の言動を見て、そう形容した。やたら水を欲しがり、口を開けば愚痴や悪態。金のためなら土下座もいとわない。世間体だとか、自分を良く見せるためだとかで繕うことが一切ない。まさに人間むき出しの状態のように、今この瞬間の欲望に忠実だ。台湾旅の終盤、最後の投稿でかなりの「いいね!」がつかない限りゴールできないとなると、意外なガッツで頑張りを見せる西村だったが、翌朝資金が足りずゴールできないことが分かると一転。「行けるところまで行きましょう」というスタッフを無視し「ゴールできないのに行く意味がわからない」と、そこで旅をやめてしまい、最後の資金で“打ち上げ”をする始末。「最低の向こう側」を見せつけた。

 そんな西村の次なる旅の舞台はモンゴル。冬は氷点下30度以下の極寒の地だ。「いいね!」1件の換算額が0・1円から0・01円に変更になると聞くと「殺す気かよ!」と悪態をつきまくるも、渡された分厚い札束を見ると「超大金持ちじゃん!」と豹変。実際はインフレで貨幣価値が下落しただけ。レストランでの値段を見て、我に返る西村の「ザ・人間」っぷりはどこか憎めない。遊牧民のゲルに泊めてもらった際も、自ら「一宿一飯の恩義」と言って薪割りや乳搾りの手伝いを申し出る、意外にしっかりしている部分も愛される所以だろう。その家族との別れも感動的。だが、そのわずか15分後、「何が『いいね!』って話なんだよ!」と悪態をつく西村は最低で最高だ。

▼『陸海空 地球征服するなんて』
テレビ朝日 土 21:58~22:59
http://www.tv-asahi.co.jp/chikyu_seifuku/