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《写真あり》他人の腕の血管をみるたびに注射を打ちたくなったことも…ヤクザ→薬物中毒→46歳・弁護士の壮絶人生

《写真あり》他人の腕の血管をみるたびに注射を打ちたくなったことも…ヤクザ→薬物中毒→46歳・弁護士の壮絶人生

『ヤクザ弁護士』 #1

2023/06/06

genre : ライフ, 社会

note

 一時期、アブリだけの味見で質の悪いものをつかまされることが続いた。あぶったときの煙の味はよいのに、注射ユーザーから「うんともすんともこない」とクレームがきた。

 客の半数くらいが注射だったからこのクチコミを無視するわけにはいかない。取引の際に注射の味見も必要になった。

 注射の味見役を雇って仕入れにいったこともあったが、取引きの現場は僕以外にもバイヤーが集結していてそれぞれ味見をしているためそれなりの雰囲気があって、緊張した味見役が1時間くらい血管に針を刺せなかった。それに、水揚げの連絡はいつも急だったから味見役を探している時間が惜しかった。

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 こうして僕は、アブリも注射も自分で味見をして仕入れをするようになった。他のバイヤーもたいがいは自分で両方の味見をしていた。

なぜ注射がいいのか?

 なんで注射がいいのか? 注射のことを思い出すだけで虫がわくから、ほどほどにしたい。

 注射のほうがアブリより身体にクスリの回るスピードが速い。注射を使っていると、段々アブリに効き目を感じなくなってしまう。味見のときだけだったはずが、普段から注射ばかりするようになってしまった。

 注射でやるようになってから頭がおかしくなるまでは、あっという間だった。およそ1年間くらいだ。

 注射ユーザーによくあることだが、だんだん血管が逃げるようになってなかなか針が刺さらない。ひどいときは2時間くらい血管と格闘していた。

 この血管と格闘している姿はなかなか気持ちの悪い光景だ。このときの腕の血管のビジョンが脳に焼き付いていて、シャブを止めて数年たってからも電車で人の腕の血管をみるたびに針を刺したくなったものだ。

 仲間と一緒に注射をしていたとき、仲間が耳に注射器をはさんだまま「おい! オレのポンプどこか知らない?」とまじめに言っていた。極限まで集中力を高める反面、注意力が低下して通常考えられないような不注意をおこすのだ。

 渋谷マークシティ前で待ち合わせをしていた先輩が、シャツの腕に注射用ゴムを巻いたままあらわれたのには驚いた。

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