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《写真あり》他人の腕の血管をみるたびに注射を打ちたくなったことも…ヤクザ→薬物中毒→46歳・弁護士の壮絶人生

《写真あり》他人の腕の血管をみるたびに注射を打ちたくなったことも…ヤクザ→薬物中毒→46歳・弁護士の壮絶人生

『ヤクザ弁護士』 #1

2023/06/06

genre : ライフ, 社会

note

シャブボケ

 シャブをして寝られない、食べられない、なんて言うのは初めのころだけ。慣れれば、使ったあとすぐに食べることも寝ることもできた。むしろシャブがキレると不安に苛まれるから、注射したほうが安心してよく寝られたほどだ。

 とはいえ、何日も寝ないということはよくあった。シャブを使っても「寝られる」というだけで、起きていようと思えば起きていられるのだ。

 忙しさに追われる現代人が睡眠を自由にできるならば、非生産的な時間である睡眠をなるべく削りたいと考えるのは普通だろう。シャブをくいながらあっちの用事こっちの用事をこなしているうちに、寝ることを後回しにしてしまった。

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 不眠も2日つづくと、頭がボケてきて、不注意や記憶力の低下がひどく、通常では考えられないバカな行動があった。自分のヤサに帰ろうとしているのに家の前を車で通りすぎる、ぐるっと回ってもまた家の前を通り過ぎる、3回目も通り過ぎた時には、なにかの映画みたいにこのままずっとグルグルまわり続けるループではないかと怖くなった。

 不眠3日目くらいになると、突然気絶するように眠ってしまうことがあった。よその一家の先輩は、運転中に気絶してよく事故を起こしていた。

 この先輩からシャブを仕入れるはずが、ホテルの部屋で爆睡してしまっていて困ったということもあった。取引きに遅刻するとどんなケツをとられるかおそろしいから、その時は警察を呼ばれる覚悟でホテルのドアをドッカンドッカンぶち壊す勢いで叩いてようやく起きてもらった。

 メシを食わないのは非常に危ない。

 睡眠と同じく、シャブを使っているとメシを食っても食わなくてもどちらでもよくなってしまう。

 意外と、メシをなめている人が多い。「痩せた~」などと言って喜んでいる場合ではない。食わないで痩せていくのは、筋肉を分解して体重が減っているだけで余計に体脂肪率が増えていたりして不健康極まりない。そして、体内の糖を使い切ったときの低血糖症状は本当に危険だ。

 僕はメシを食わなすぎて低血糖状態に陥っていたことが、自分の「電波が飛んだ(気が狂ったような異常行動をすること)」ひとつの原因だと考えている。なぜかというと、ボクシングのための減量時などシャブをやめてからも何度か厳しい糖質制限をしたことがあって、その時にシャブで電波が飛んだ時と同じような感覚になったからだ。

現在はアマチュアボクサーとしても活躍する氏(写真:本人インスタグラムより)

 今考えると、僕はシャブでおかしくなったというより、メシを食わなすぎて低血糖になってしまったことでおかしくなったのではないだろうか。僕が体験した幻覚症状については後に書くけど、これも低血糖による幻覚症状の面もあると思う。

 現役のポン中のみなさんにお伝えしたい。シャブをやめよう。シャブをやめられないなら、最低限メシだけはしっかり食おう。

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