では、一般公開が終わりを告げた富士総合火力演習(総火演)はどう変わったのだろうか。総火演についての報道は、演習内容の変化をみることで、陸上自衛隊の防衛方針の変化を探るのが定石であるが、今回は今後も一般公開されないことが決まってから初めての総火演だ。そこで、在りし日とは異なる「客」のいない総火演に焦点を絞ってお伝えしたい。

バスやタクシーもなく、車はまばら…

 総火演の一般公開はなくなったものの、招待者や報道向けの公開は引き続き行われている。報道枠の申請が通ったため、5月27日の早朝に車で東富士演習場へ向かった。これまでも報道枠や一般公開(駐車場付き)で総火演に自家用車で行ったことはあるが、その度に会場への道でよく見かけた自衛隊車両を今回は一度も目撃しなかった。一般車も少なく、明らかに雰囲気が異なる。

2023年の総火演会場前の道路

 指定された報道用駐車場は総火演会場と道一つ挟んだ向かいにあった。この道は一般公開があった頃は、バスやタクシー、自家用車がひっきりなしに行き交っていたものだが、今年は朝8時頃でも交通量が明らかに少ない。報道用駐車場は2014年までバスやタクシーの降車場があった場所で、来場者が行き来するために仮設橋が必要なほどの交通量があったが、今や車がまばらに通るだけ。総火演とは思えないほどのどかな光景だ。

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2008年の総火演会場前の道路

 報道席に案内される時間になり、広報官から説明がなされる。報道向けには前方のシート席に近い場所と、スタンド席が用意されているが、筆者が希望したスタンド席について「スカスカです」と説明された。実際に席に案内されると、かつては報道関係者がギッシリ詰めていたスタンド席も、各人が荷物を横に置いても誰の迷惑にもならないレベルだった。中には1人で三脚を3つ以上設置している人もいたが、それでも全然余裕がある。少し信じられない思いだ。