彼らの今回の臨時基地は、昨年11月の白紙運動のときよりも狭かった。どうやら横断幕などの大きな物資は、さらに別の場所に借りた会議室に保管したようだ。
とはいえこちらの基地でも、数人の男女がブース用の張り紙などをせわしなく準備しており、ヒマそうに見える人はいない。普段の取材ではボドイ(ベトナム人不法滞在者)ばかり見ている私の目には、まぶしく感じられてしまう効率的な働きぶりだ。
彼らはもともと、反体制的なマインドが強めのネット上の好事家グループだった。従来、彼らは非政治的なボランティア活動をおこなったり、2022年の渋谷のハロウィンに当時のゼロコロナ政策の象徴「大白」(全身防護服)姿で登場してPCR検査のパフォーマンスをおこなったりと、比較的ゆるめのオフ会活動を何度か実施してきた。だが、昨年末に中国で白紙運動が起きた際に、それまでの趣味活動で培ったスキルを活かして日本での集会を組織。まずまず成功した。今回は2回目の大規模な政治活動である。
自由は無いと困りますよねえ
やがて17時ごろから、新宿南口で会場の設営が始まった。巨大な横断幕が地べたに敷かれ(巨大すぎて縦に掲げられない大きさだったためだ)、さらに各種の立て看板を設置。Tシャツなどやトートバッグを1500円で販売する物販コーナーや、天安門関連の書籍の紹介ブースも作られていった。
集会は18時ごろから始まり、参加者や見物人がどんどん増えて盛況になった。前回の白紙運動のイベントでは、群衆が殺到した一方で有象無象の活動家に会場をジャックされて混乱状態が起きていたが、今回は黄色い「STAFF」ベストを着たメンバーが参加者の誘導にあたり、演説の登壇者も事前にある程度は取り決めていたようだ。明らかにイベント運営に慣れてきている。
スピーチでは、この日の他の天安門関連イベントに合わせてアメリカから来日中である中国民主活動家で、元天安門リーダーの1人の周鋒鎖が最初にマイクを握った。ただ、話は十年一日の内容で、しかも長い。個人的にはそれほど興味深いとは思わなかった。
むしろ、「自由は水や空気と同じだし、無いと困りますよねえ」と、いまいち落ち着きのない素振りのまま威厳に欠けた口調で演説していた主催グループの若者のほうが、良くも悪くも2023年の中国人らしい感じを受けて面白かった。
香港グループも協力することにしました
ほかに興味深かったのは、2019年の香港デモのトレードマークである黒シャツ姿の香港人の若者の姿も目立ったことだ。だが、彼らは前年までの小規模集会では掲げていた「光復香港時代革命」の旗を、今回はあまり大っぴらに出さず、黙々とサポート役に回っているように見えた。