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「だいたい20人くらいは香港人が来ています。天安門事件は中国で起きたことですが、去年までは(同世代の)中国人が運動をやっていなかったので、僕らが前に出ていた。ただ、今年は白紙革命の中国人のグループが頑張っている。なので、この場は中国のみなさんがメイン。僕らはそこに協力することにしました」

 現場で顔を合わせた在日香港人のリーダーのウィリアム・リーはそう話した。

「今の香港は(これまで毎年実施されてきた)天安門事件の追悼集会ができなくなっている。なので、僕たちの参加はそのことに対する意思表示でもあります」

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天安門学生のハチマキを締めて、演説にも登壇したウィリアム・リー。昨年11月の白紙運動のときと比べても、日本の集会では香港側と中国側の関係は良くなっている。©安田峰俊

 香港はもともと、天安門事件の追悼集会が世界で最も大規模におこなわれ続けてきた街だった。ただ、2010年代後半以降、香港独立派の若者の間では「自分たち香港の歴史ではない」天安門事件の追悼をことさら拒むようなパフォーマンスもおこなわれた。しかし、やがて香港デモを経て2020年6月に香港国家安全維持法が施行されたことで、独立運動どころか天安門事件の追悼活動すらもすべてが取り締まりの対象になってしまった。

 この日、香港グループは会場に、天安門事件の犠牲者を象徴する「國殤之柱」(Pillar of Shame)のミニサイズのレプリカを持ち込んでいた。この「國殤之柱」は、デンマーク人の彫刻家が制作して1998年から香港大学の学内に設置されていたが、国安法施行後の2021年12月に撤去・解体されたといういわくつきの代物である。

会場に登場した「國殤之柱」のレプリカ。作者のイェンス・ガルシュットは現在、撤去を受けて像の3Dプリンター用のデータを無料公開中。この日の新宿南口に登場したレプリカも、在日香港人の若い女性が3Dプリンターで出力して作ったものだった。©安田峰俊

 本来、香港人の若者にとっては距離があったはずの天安門事件は、国安法による追悼活動の違法化と「國殤之柱」の撤去を受けて、皮肉なことに「自分たちが迫害された歴史」の一部分に変わってしまった。この問題の当事者として、中国人の白紙運動グループと共闘する理由も生まれてしまったのである。

敵が強ければひとまず手を組む

 ところで、イベントを主催した白紙運動グループは強固な組織ではなく、「代表格」と呼べそうな人は何人かいるものの明確なリーダーもいない。個々のメンバーも「中国の現体制にすごく不満」という一点以外は、ネット上で悪ふざけを繰り返している人たちから、在日中国人のフェミニズム運動など他の運動にも関わっている人まで、思想や人権意識などにかなりの幅がある。

 当事者に話を聞いてみると、白紙運動以前のネットコミュニティのメンバーだった古株から、白紙運動後に仲間に入った人まで経緯もいろいろだ。年齢はおおむね20代で、若手社会人と留学生(大学院生のほうが多そうだ)が中心とみられる。

参加者の多くはお面などで顔を隠していた。©安田峰俊