11月25日にはじまった反ゼロコロナ政策・反習近平政権をとなえる中国の政治運動「白紙運動」(白紙革命)は、当局の徹底した封じ込めと、コロナ対策の緩和もあって、中国国内ではわずか数日で沈静化した。運動は今後、先細りする可能性が高いが、日本など各国では中国人留学生らがいまなお活発に動いている。
彼らの活動の形態は、習近平政権を積極的に批判するデモや政治集会を組織する動きと、政治色を薄めてゼロコロナ政策による人災(ウルムチの火災や貴州省の隔離者バス事故など)の被害者を追悼するキャンドル集会を行なう動きのふたつにわかれる。
後者は、運動のトレードマークである白い紙を持って数人~十数人が無言で立つ形式が多い。ほか、各大学の掲示板に留学生らが反習近平ポスターを貼る動きもまだ活発だ。ただし現時点まで、全体を統一して指揮する主催者や団体は存在しない。
名門大学にあらかた地下グループが出現
関係者の証言や現実の活動から推測する限り、東京と京都・大阪の上位国公立・私大の多くで、白紙運動をおこなう留学生の小規模な地下サークルが結成されている。集会の参加人数や各種SNSグループの規模から考えると、広い意味でシンパになった中国人の若者は日本全国で1000人くらいはいるのではなかろうか(なお、日本にいる中国人留学生は現在、約12.5万人である)。
12月3日、大阪でなんと中国総領事館に直接抗議に行くデモがおこなわれると聞き、私は取材に行ってみた。だが、実際は運営の不手際で街頭デモの手配がなされていなかった模様で、「出発地点」である靭(うつぼ)公園で演説会がおこなわれただけの、ちょっと残念なイベントに終わった。それでも、遠巻きに見つめている人を含めると、100~150人くらいは中国人が集まっていた。大部分はマスクや帽子、サングラスで顔を隠している。
この集会には大手各社のメディアが取材に来るのがわかっていたため、私は彼らと差別化するために、参加する学生の素顔にもっと近づいてみようと思った。そこで活動の前日、大阪の白紙運動シンパグループのSNSコミュニティで見つけた1人に事情を話して頼み込み、彼の自宅から活動を終えるまでずっとくっついてみることにした。
「大学に申請しなくて大丈夫かなあ」
チェン(仮名)は長江下流域の街で生まれた20代後半の男性である。とある国公立大の理系の大学院生で、日常系ゆるアニメのほんわかした女の子のイラストをSNSのアイコンにしている。