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「大学に申請しなくていいの?」大阪の“総領事館突撃”集会…気弱な中国人留学生に密着して見えた革命の正体

2022/12/08

genre : ニュース, 社会

「先生は当時40代だから、天安門世代だったのかもしれない。まだスマホが普及する前で、教室での会話を誰も録音しない環境だから話せたんだと思う。今回、僕が活動に参加しようと思った理由のひとつです。こんな国、おかしい」

 ゆえにチェン自身、もともと体制に批判的ではあった。天安門事件の鎮圧の夜である6月3日に、遠回しに事件を連想させるような文章を微信(WeChat)のモーメンツに投稿したこともある。とはいえ、他の学生たちと同様に、当時はそれ以上のことはなにもしなかった。

歩くチェン。彼の自宅は関西のどこかのニュータウンにある築50年くらいのアパートだ。©Soichiro Koriyama

「昨日(12月2日)、〇〇大(関西の某国公立大)で7人くらいが参加するキャンドル集会があって、生まれてはじめて政治的な活動をしました。両親が知ったら? 絶対に反対する。でも、今回はいろんな人が動いているから、声を上げるチャンスと思った。こういう機会はあまりないですし」

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現代中国の社会では生きにくそうなタイプ

 やがて時間が迫り、自宅を出る。途中、チェンはICOCAの残額が125円しかなく、券売機に向かったものの500円しかチャージしなかった(ゆえに案の定、帰路にも残額が足りなくて改札で引っかかり、再びチャージする羽目になっていた)。

 地下鉄駅を出ると、チェンは「自由と民主のため、独裁と戦います」と言いながら、個人を特定されないためサングラスとフードをかぶった。だが、考え事をしながら歩いていたらしく、靭公園の近所の交差点で車に轢かれかけた。習近平政権よりも前に大阪の軽トラに殺されそうである。すくなくとも、生き馬の目を抜くような現代中国の社会では生きにくそうなタイプの人なのは察せられた。

──その後、靭公園のデモが不発に終わったことはすでに書いた。もっとも最後、事前の許可を得たわけではないものの「集会から帰宅中に通りかかった」という名目で、警察官が付き添う形で参加者たちが中国駐大阪総領事館の前を歩いて声を上げた。

中国駐大阪総領事館(右の建物)にプラカードを向ける参加者。上海で大きな騒ぎがあったことで運動のシンボルになっている「ウルムチ中路」の道路標示をあしらったものだ。©Soichiro Koriyama

 小規模とはいえ、中国人留学生のデモ隊が総領事館に向かうのは、天安門事件のとき以来ではあった(まったくの余談ながら、33年前に同じ総領事館に向けて天安門抗議デモを仕掛けた留学生グループには、神戸大学大学院の修士課程に在学中だった若き日の石平氏(現・評論家)が加わっていたことが知られている)。

僕が活動に参加するもうひとつの理由

 機密保持の問題から主催者を明らかにできず、現場で仕切る人も決まっていない、参加者はほぼ全員が実質的に初参加……。といった諸々の困難な事情があったとはいえ、正直なところ12月3日の大阪の集会は、見ていてそれほど面白いものではなかった。

12月3日の集会後のチェン。公園内でプラカードを仲間とともに持ってみた。©Soichiro Koriyama