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道幅激狭、道路の先は行き止まり…広島県の山間に佇む正体不明の“謎トンネル”がつくられた“意外な経緯”に迫ってみた

2023/06/21

genre : ライフ,

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 世の中には様々なマニアがいるが、道路をこよなく愛する“道マニア”も存在する。私もその一人なのだが、道マニアの間でひそやかに“謎のトンネル”と囁かれている場所がある。

 謎のトンネルが位置するのは、広島県の山あい深く。道幅は狭く、対向車とすれ違うことができないが、それにしては立派なトンネルが掘られているという。また、トンネルの先で道路は行き止まりとなり、使われている様子はないそうだ。

 いったい何のためのトンネルなのか。気になった私は、早速、広島に向かった。

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謎のトンネルの坑口を発見!

 この時、テレビ番組の撮影スタッフも同行していた。毎週、道路のことしか出てこない『道との遭遇』という超ニッチなバラエティー番組があるのだが、その番組に私は道マニアとして出演しており、親しいスタッフに「広島に謎のトンネルがあるので休みの日に見てこようと思う」とメッセージを送ったところ、「じゃあ次のロケで行きましょう」と返ってきたのだ。

中国山地を北上して謎のトンネルを目指す

 岐阜の自宅を出発してから運転すること7時間、ようやく広島市に入る。さらに中国山地に向かって1時間北上し、謎のトンネルがある安芸太田町に着いた。

 東西に流れる筒賀川に沿って、国道186号と中国自動車道が並行している。国道の近くに車を停め、謎のトンネルを目指して歩く。

 国道から南に向かって、筒賀川を渡る橋が架けられている。ここが謎のトンネルへの入り口だ。普通車ならやや余裕がある道幅だが、対向車とすれ違うことはできない。路面は古びた感じはなく、普通に利用されている道路に見える。

 橋を渡った直後から上り坂が続き、中国道の脇をかすめるようにして下から上へと追い抜く。高速道路を間近で見られることは少ないので、これはこれで楽しい。道端の藪が切れ、見晴らしがよい場所があったので、前方を眺める。

 だいぶ向こうに、謎のトンネルの坑口が見えていた。コンクリートで固められた法面に、ポッカリと口が開いているのが見える。

広島県の山あい深くにある謎のトンネル

 全体を眺めると、筒賀川に沿って4本の道路が並行して伸びているのが分かる。一番低い川沿いに国道186号、その両サイドには中国道の上下線2本の高架橋があり、右側の最も高い場所に謎のトンネルが見える。

写真右上に写っているのが目指しているトンネルだ

 このように複数の道路が同じ場所に集中している場合、地形的に別のルートで道路を造れなかった可能性が高く、道路造成における地形の厳しさを感じさせる。

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