ついに謎のトンネルの正面に到着…
国道から歩くこと5分、道沿いに何やら真新しい設備が見えてきた。近づいてみると“公益社団法人移動通信基盤整備協会中国自動車道椿山トンネル上り線局”と書かれている。どうやら、中国道のトンネル内でも携帯電話の電波が入るようにするための基地局のようだ。
そして、この基地局の先で道路の状況は一変する。大量の土砂と落ち葉、それに植物が路面を覆い尽くし、アスファルトが見えなくなっている。目の前には松の木が倒れ、まるで行く手を阻んでいるようだ。
倒木を歓迎のアーチだと思うようにして先に進む。事前に確認した情報では、この道はれっきとした公道であり、通行止にはなっていない。これが現役の公道だと思うと、ちょっと楽しくなってきた。
舗装されているとは思えない獣道だが、道をよく観察してみると、ただの道ではなく橋になっていることに気づいた。よほど急峻な地形だったためか、山の脇から出っ張るような形で橋が架けられている。橋の上の藪をかき分けて進んでいくと、視界を遮っていた藪の先に、突如としてトンネルが現れた。
これが、謎のトンネルだ。トンネルには名称を示す扁額などはなく、内部はコンクリートが吹き付けられているだけで、簡素なつくりとなっている。道幅はこれまでと同様1車線しかなく、トンネル内で対向車とすれ違うことはできない。しかし、特筆すべきは高さだろう。高さは3メートルほどあり、大型車の通行を想定していたことがうかがえる。
トンネル内に照明はないが、何かのコードが天井から垂れ下がっていた。コードを辿ると、トンネル内のロックボルトと、トンネル外の配電ボックスに繋がっていた。トンネル内の張力を測定していたのだろうか。留め金が腐食して破損したため、コードが天井から垂れ下がっていた。
100メートルほどのトンネルを抜けると、その先はまた橋になっていた。相変わらず現役の公道とは思えないが、橋とトンネルが連続し、当時としてはかなり高規格な道路だったようだ。
道は突然、終わりを迎える。国道との分岐から1キロにも満たない地点で、いきなり目の前にガードレールが現れた。その先に道はなく、ここが終点で間違いない。終点付近は車が転回しやすいように、少し広くなっていた。