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道が造られた経緯を知るための“手がかり”

 何か手がかりがないかと周辺を探していたら、道から少し外れた場所に境界杭が見えた。駆け寄ってみると、杭には“日本道路”と彫られている。これはもしやと思い、杭の根元の土砂をそっと取り除くと“日本道路公団”の文字が現れた。これは、大きな手がかりが得られたかもしれない。

日本道路公団の杭を発見

 道というのは、必ず何かの目的があって造られる。道を造るには、お金も労力も必要なので、理由もなく造られることはない。しかし、この道は謎のトンネルと囁かれているだけあって、目的が全く分からない。

 ただ、実際に歩いてきた状況から、2つの仮説が頭に浮かんでいた。

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 1つは、中国道建設用道路説。高速道路などの大規模な道路を建設するには、事前に建設用機材を運び込むための仮設道路が造られることがある。ここでいえば、謎のトンネルと並行して中国道に大井トンネルが掘られている。このトンネルを掘削するため、あるいはトンネルが貫通する前に、その先の地上区間を建設するために造られた道ではないかと思った。

 トンネルの高さがあったのは、大型の建設機械等を運び込むためだと考えれば合点がいく。日本道路公団の境界杭と、道路の入り口付近に高速道路関係の設備があったのも、高速道路との関連性を疑わせる。

トンネルへと続く道はなかなかに険しい

 しかし、高速道路との高低差が数十メートルもあることと、原状として公道となっていることから、少し無理があるように思えた。

 もう1つは、林道説だ。元々林業が盛んな土地で、山には多くの林道が設けられている。伐り出した材木を運び出すには、トンネルの高さも必要だ。通常、林道にトンネルが造られることは少ないが、地形の険しさや、トンネルの手前は広葉樹が多かったのに対して、トンネルの先は植樹された針葉樹が中心だったことからも、林道という可能性も考えられる。日本道路公団の境界杭は、山の法面工事のため公団敷地になっていたと考えれば矛盾はない。

 しかし、林道のためにわざわざ橋を架けてトンネルを掘るかといえば、どうだろうか。大規模な幹線林道ならまだしも、1キロ足らずで終点となる林道にしては立派すぎる。

 現地を見れば何か分かるのではないかと思っていたが、真相の究明は思った以上に難しかった。分からない時は人に聞くのが一番だ。私はこうなることを想定して、謎のトンネルを探索しながら近くに集落がないかと探していた。筒賀川を挟んだ対面の山に人家が見えたので、そこへ行ってみることにした。

 集落に到着すると、ちょうど住人が車から降りるところに遭遇したので、声をかけた。