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先生の社会的地位は日本以下

 また、中国が不思議なのは、これほどまでに学歴を重視していながら、先生の社会的地位は日本以下であることだ。塾の禁止令のインタビューで新婚の塾講師が言っていたのが、本当は小学校の先生になりたかったが、給与が低すぎてマンション購入の負担などを考えて諦め、塾の教師になったという経緯だった。ある子は、自分の小学校の先生が「本当は警察官になりたかったが、なれなかったので、小学校の先生になった」と生徒に話していたと語ってくれた。中国の公立小中学校の先生の生活は決して楽ではない。

 このように、教育システム全体は、「エリート選抜色」が色濃く残る中、中国の大学は2003年以降、門戸を一般人にも広く開き、規模的には一気に「大衆化」した。合格者数では1980年には28万人だったのが、2020年には約35倍の967万人に急増。狭き門だった大学は2021年の高等教育純入学率は57.8%と日本の54%を上回り、在学生総数は4430万人に増加した。また、2021年の大学院受験者数は377万人(うち111万人が合格)に上る。

 中国の大学で教鞭を執る大学関係者によると、今では、大学や大学院は就職難の学生を一時的に吸収する就業バッファーの任務を負っているという。新型コロナウイルス感染症の影響やIT産業の陰りなどで就職市場が厳しい今年、2022年の大学院生試験受験者は学部卒業生の約半分に相当する457万人に上る。うち6割が就職難と就職での競争力向上を大学院進学の理由に挙げている。

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 こうして、14億人の大衆総参加の下で名門校をピラミッドの頂点とするエリート選別教育が全国で実施されている。学校は基本的に「振り落として」「優秀な人材を選抜する」ことが目的なので、ついていく学生は大変だ。小学校低学年の頃からひたすらテスト問題の演習に勉強時間を費やす。熾烈で苦しい競争で少しでも有利に立つために、塾サービスを利用したいというニーズは全国に存在する。消費者側の購買力の向上とともに、塾サービスの費用もうなぎ登りに上がっていき、気がついた時には全国の家庭にとって精神的にも経済的にも非常に重い負担となっていた。(続きを読む

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