支持母体である創価学会に対する評価はさまざまですが、民族主義的右派からの熱狂的な支持を受けてきた安倍晋三さんの立ち位置は、実際にはハト派で中国との関係も重視し、生活者目線の左派的政策の実現にあたって公明党の果たした役割が大きかったのは事実です。自民党右派が公明党を嫌う理由も、親中派的ポジションを公明党が一貫して取ってきたことが怒りポイントになっています。好き嫌い関係なくパイプは必要だし、平和と人権を尊重するのは公明党らしくていいと思うんですけどね。
都構想の失敗後、維新の追い上げをくらう公明党
ところが、自民党でも「公明党との連立政権はわずらわしい」と思う人たちも少なくありません。
今回、統一地方選挙や千葉5区衆院補選では候補者の擁立を巡って波乱があった一方、埼玉でも埼玉県連と公明党との対立が激化。さらには、冒頭の通り自民党東京都連では都連幹事長・都議の高島直樹さんが、旧12区選出の公明党・岡本三成さんの新29区への国替えに関し余計なことを言ってしまいます。高島さんは記者団に「(新29区での岡本さんの出馬を)了解はしていない」と語り、実質的に自民党都連が公明党の支援を受けずに選挙戦を戦う羽目に陥るきっかけをつくってしまったわけです。
公明党が必死な理由は、近畿地方での日本維新の会躍進に原因があります。
公明党が9つ確保している小選挙区の議席のうち、大阪と兵庫で6つを確保しています。維新陣営の結党以来の悲願であった大阪都構想が2度の住民投票の失敗で仕切り直しとなり、これを維新と共に支えた公明党が実質的に「用済み」となってしまい、選挙などでの両党の協力関係を解消する動きが出たことが背景にあります。ただ、維新の人たちに話を聞くと、割と動物的勘のような行動原理で動いていて、あんま戦略的にこうだっていう話が全然出てこないのも印象的です。
大阪や兵庫の各選挙区の最新の情勢調査の結果は6月中旬以降にならないと判明しませんが、公明党が議員選出している選挙区に維新が候補者を擁立すると、目下大阪4議席兵庫2議席が場合によっては全滅する可能性が否定できません。
公明党の一部支持者には楽観視する考えもあるようですが、例えば公明党の有力議員である伊佐進一さんが確保している大阪6区では、確かに39万人の有権者のうち10万票あまりを取って当選しています。しかし、ここに維新が候補者を立て、維新が自公分裂を争点に投票率を7%から9%引き揚げてしまうと、2009年衆院選のように僅差とはいえ落選してしまいます(その際の公明党候補者は福島豊さん)。それまでの選挙でも安定して9万票前後確保している選挙区であったのに、です。
公明党に限らず、支持団体の固定票による議席確保は、政治の風向きが逆風になって投票率が上がると一気に失われてしまうのもまた小選挙区制の恐ろしさと言えます。基本的には投票率が上がるイコール浮動票が増える、その浮動票はたいてい公明党には入りません。