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 土日は営業イベントも他の仕事もあるし、テレビやラジオのレギュラーも増えてきている。売れはじめた芸人にはひっきりなしに声がかかりますから、浜田くんがフッと消えたくなってしまった気持ちを、みんなわかっていました。

逃げるのではなく「1回休み」

 戻ってきてくれて結果オーライというのもありますが、途中で浜田くんが行方不明になったことを、僕は良かったと思っています。人生すごろくなら「1回休み」です。

 人間関係や仕事がうまくいかず、今いる場所がつらかったら、がんばらなくていい。逆に、人間関係も仕事もうまくいっていたとしても、今いる場所がつらいものになることもあるから、その場合もがんばらなくていい。

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 がんばり続けるのもしんどいし、完全に逃げるのも勇気がいるから、「避難場所」に一時的にちょこっと行ったらどうだろう?僕はそう思っています。

・つらい時は「逃げる」のではなく、「緊急避難」する

・少しの間だけ、その場を離れて一人になってみる

・ふうっと大きな深呼吸をして、「戻ろう」と思ったら、また戻る

 そういう場所を持っておくと、救われる。これは僕自身の経験でもあります。

松本だけに見抜かれた心の内

「大﨑さん、最近ちょっと僕から逃げてるでしょ」

 松本くんにぼそっと言われたのは、『4時ですよ~だ』がすっかり人気番組として定着した頃です。

松本人志氏 ©文藝春秋

 生放送の本番中の1時間、2丁目劇場をそっと抜け出した僕が向かった場所は、銭湯でした。心斎橋の「清水湯」。20歳くらいから通っていた大好きな場所。

 この頃の僕は、行き詰まっていました。毎週毎週、4時から5時まで生放送、6時からイベント、7時からまたイベント、そのあと9時からもイベント……。表に立つ芸人とは違いますが、僕もまた、浜田くんと似たような状況に陥っていたのです。

 上り調子であるからこそ、次々と新しい企画を考え、いろんな手を打たなければいけない。お金のあれこれやスケジュール調整も、スポンサーや会社との折衝も必要でした。しかし、それはまあ、いいんです。一番大きな課題は松本くんのことでした。

 仕事への飽くなき欲求を持つ松本くんは、より高みを目指しているように見えました。僕としては「世界を狙う!」と最初から感じていた二人です。高みを目指すのは大賛成で、なんとかして東京に連れて行きたい。松本くんならいずれ映画を撮り、本も書けばいいと思っていました。

 それでも松本くんは、「大阪にいたい」と言うのです。