吉本総合芸能学院(NSC)の1期生として入学してきた浜田雅功氏と松本人志氏の二人を、人気芸人に育てあげた、前・吉本興業会長の大﨑洋氏。“三人目のダウンタウン”とも称される同氏はいったいどのような考えのもと、コンビを支えてきたのか。

ここでは大﨑氏の処女作『居場所。』(サンマーク出版)の一部を抜粋し、ダウンタウン解散の危機をつなぎとめた際の立ち回りについて紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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浜田と松本のタクシー領収書

 どんなコンビもだいたいそうだと思いますが、ダウンタウンの二人も、性格が違う組み合わせです。

 たとえば交通費の精算。

 いくら人気が出てきたとはいえ、2丁目劇場に出ていた頃はまだまだ新人です。電車やタクシーに乗って家から劇場に来たり、劇場から他の仕事に行ったりする時、全部をマネージャーがフォローするわけではありません。

「ほんなら各自で立て替えて、領収書をもらっておいてな」

 すると松本くんはきっちり日にちの順番に1週間分のレシートやら領収書やらを揃え、端をステープラーで留め、「大﨑さん、これ」と、封筒に入れて持ってきます。

松本人志氏 ©文藝春秋

「○月○日から7日分」などと表書きもあり、几帳面にやるんです。

 では浜田くんはどうかと言えば、1週間たっても2週間たっても何も持ってこない。

「浜田、早よ、領収書! 会社は日締めやから、今日までやねん。早よ出してくれんと精算でけへん。経理のおばちゃんらにどつかれるんや」

 僕が何度も口うるさく催促すると、「えー? そんなん知らんし」とかなんとか言いながら、ポケットを探り、鞄をかき回し、紙切れをぼろぼろ出してきます。

「浜田、これあかんわ。おまえ、どっかのお姉ちゃんに指輪かなんかを買うたやろ。それも同じものを3つ。こんなん経費で落とされへんから。ガムの包み紙は交ぜるな、すぐに捨てとけ。それになんやこれ。ツレとの飲み食いやな。それも去年の日付やん。これもあかんやん!」

 ようやく「梅田交通」とかすかに読めるタクシーらしきレシートが出てきますが、シワシワのくちゃくちゃで、いくらかかったのか数字が消えかけている!

 小学生からの幼馴染とはいえ、二人の性格はまったく違いました。

ダウンタウン解散の危機

 皆さんがテレビでご存じの通り、ダウンタウンは極めてつよいキャラの二人ですし、「芸人は仲良しこよしではいられない」というのは、わりに知られている話だと思います。芸となったら真剣ですから、いくら相方でも二人の意見がぴったり一致するというのは不可能なこと。