「大﨑さん、そんなん無理ですわ。黒やと言ったら黒や!」
「そうか。そりゃそうやな」
まずは意見を聞いてガス抜きをし、次に浜田くんと同じやりとりをします。
「なあ、浜田。おまえが白がええと言うのは、俺もようわかるわ。そやけど松本は黒がええと信じとんねんな。どうしようか?」
「大﨑さん、そんなん無理ですわ。白やと言ったら白や!」
この八方美人的行ったり来たりを根気強くやっているうちに、だんだん二人の心はほぐれてきます。
黒と白を混ぜてグレーの方向に
「なあ松本。黒はいいんやけど、ほんのちょっとだけ、白も混ぜてみいひん? 限りなく黒に近いグレーにするんや」
「グレーですか? 大﨑さん、それは無理やないかな」
松本くんが突っぱねたら、今度は浜田くんのところに行ってこう話します。
「なあ浜田。松本が言ったわけでなく、これは俺の勝手な意見やねんけど、松本は黒でなくグレーはどうかなと考え始めているようや。どないや? ちょっとグレーっぽい白でも、問題ないんとちゃう?」
「グレーっぽい白なあ。まあ、松本がええ言うならええですけど」浜田くんの言質をとったら、またまた松本くんのもとへ。
「このあいだ俺、グレーはどないやと聞いたやろ。浜田もグレーでOKやと言ってる。なあ、松本の真っ黒に、ちょこっとだけグレーの斜め線、入れたらどないや?」
意見が対立した場合、どうするか。今のマネージャーや芸人は、みんなで集まって話し合って決めるようですし、ダウンタウンの場合も本当は二人で話したほうが話が早かったのかもしれません。
最悪の事態を避けるための自分の“役割”
しかし結果論とはいえ、僕の心配性ゆえに編み出したこのやり方でしのいできた実感もあり、少なくとも二人が大喧嘩になって、「コンビ解散や! もう吉本辞めじゃ!」という最悪の事態が訪れることはありませんでした。
なんとしても仲違いをさせてはならない──僕は浜田くんと松本くんを「奇跡の最強コンビだ」と信じていたし、うまく落としどころを決めて良い方向に持っていくところに、自分の役割があると思っていました。
コンビ二人の中に入り込んで、三人の関係になる。浜田くんと松本くんは「俺ら二人でダウンタウンだ」と今も昔も思っているだろうし、実際にその通りです。
それでも、2年間にわたって松本・浜田に密着取材をした吉本公認の本『ダウンタウンの理由』(集英社)の中で、著者の伊藤愛子さんは僕について、こんな表現をしてくれました。