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結果を出さないといけないプレッシャー

「大﨑さん、本を出したり映画をつくったりして世界へ行けなんて、なんでそんな悲しいことを言うんですか。僕は金持ちの家の子やないし、運動神経がいいわけでもないし、ギターがうまく弾けるわけでもないし、特別にハンサムでもない。やっと見つけたのがお笑いなんです。僕はこのお笑いという100メートル走を、何度も何度も走りたい。それなのに大﨑さんが言うてるのは、僕に走り幅跳びせえ、400メートルリレーもせえ、ってことですよね」

 ストイックなまでに笑いを考える松本くんだからこそ、そう言うのもよくわかります。松本くんだけではなく浜田くんにとっても、ダウンタウンというコンビにとっても、どのタイミングで東京に行くのがいいのか?

 考えても、その当時の僕には答えが出ない、正解を見つけられないことばっかりで、できれば考えたくない。でも結果を出さないといけない。

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 一人で考えてもなんの答えも出ないとわかっているのに、「考えなきゃいけない」というプレッシャーが何重にも頭にこびりついていて、疲れているのに寝るに寝られない。

 そこで、お客さんもスタッフも大勢いる『4時ですよ~だ』の本番中に、フッと抜け出して、2丁目劇場から歩いて7、8分の清水湯に行っていたのでした。

清水湯があったから、精神を保てた

 とりあえず我慢の限界までサウナに入り、水風呂に飛び込んで寒くなるくらいまで浸かり、またサウナに戻ってヘロヘロになる。

 この繰り返しで神経をぐちゃぐちゃに疲労困憊させないと、自分自身がもたないというか、身の置きどころがない気がしました。

 サウナの高熱と水風呂のキンキンの冷水で何も考えられない。何か考えるどころか、頭が空っぽになり、ただただ我慢する場所。

「みんな裸やなあ。素手やしなあ。戦う武器を持たなかったら、こんなに無防備でぼーっとしてられるんやなあ」

 くだらないことを考えている場合じゃないと自分で呆れつつ、考えられることはせいぜいそのくらいで、ひとしきり汗を流すとサウナ室の中のテレビに目をやります。

『4時ですよ~だ』の生放送が、まさに始まっています。

 銭湯から出ると、何食わぬ顔をして2丁目劇場に戻り、「本番お疲れさん」と芸人やスタッフたちに声をかけ、会議をする。何十人と働いている中、そっと抜けている僕に気づいていた人もいたと思います。

 でも、その奥までさらに見抜いて、「逃げてるでしょ」とぼそっと言ってきたのは、松本くんだけでした。確かに逃げていたのかもしれないけれど、清水湯という名の避難場所があったから、あの頃の僕は精神を保てていたのだと今も思います。