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壁にぶつかった根尾昂への浅尾コーチのアドバイス

 しかし、3回目の壁に当たる。4月5日のオリックス戦。根尾は2者連続四球の後、三振を奪ったが、また四球。わずか1アウトで降板した。

「その日まではストレートの勢いである程度抑えられていましたが、正直、少しずつズレを感じていました。それが一気に出たという感じです」

 翌日以降、ベンチ入りメンバーから外れ、再びフォーム修正の日々が始まった。

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「山井(大介)さんと浅尾(拓也)さんには本当に感謝です。リリースの感覚を掴むドリルや下半身の使い方のドリル、その他にも現役時代に取り入れていた方法をたくさん教えて頂きました」

 2人のコーチに共通しているのは強制しないことだった。

「合わなかったらやめていいよと。浅尾さんには『自分の感覚を出していく方が(フォーム修正は)早い』と言われ、気持ちが楽になりました。より自分の感覚を信じようと思えました」

 2週間の試行錯誤の結果、左脚をピンと伸ばす今のフォームに行き着いた。

「球に力が伝わります。悪い時はどうしても上半身で投げてしまうので、下半身としっかり連動させるイメージです」

 止まった針が動き出す。根尾は5月2日のソフトバンク三軍との練習試合で実戦復帰し、5月27日のオリックス戦で先発。ロングリリーフを2回挟んで、6月23日の阪神戦に先発し、7回無失点。「もっと投げられると思いました。課題もたくさん見つかりましたし、次回までに潰したいです」と力を込めた。声も明るい。一軍登板の目処を聞くと、即答だった。

「早ければ早いほどいいです。それはここにいる誰もが思っていること。ただ、一軍の先輩たちは長いイニングを投げ切っています。まずは二軍で投げ切ること。それが絶対条件です」

 アマチュア時代は順風満帆も、プロ入り後に人生初の遠回り。そんな彼を不憫に思う人もいる。しかし、どうも違う。根尾は前から多くの失敗や挫折を味わい、そんな時こそ前を向き、できることに集中し、全てを力に変え、練習を重ね、感覚を磨き、乗り越えてきたのだ。壁にぶつかりながら、自力で這い上がる。それが根尾なのだ。

 最後に聞いた。内野、外野、投手となったこれまでをどう思うか。根尾は「振り返るのはまだ早いです」と笑った。そう、背番号7は常に前を向いている。

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