「彼らと一緒にされたくない」「本当に迷惑です」
日本でアクティビストという存在が広く知られるようになったのは今から20年前。2003年12月に米投資ファンドのスティール・パートナーズが、金属加工油剤大手で当時東証2部に上場していたユシロ化学と、毛織物染色加工大手で当時東証2部と名証2部に上場していたソトーにTOB(株式公開買い付け)を仕掛けたのが始まりだったといえるだろう。
ユシロ化学とソトーには共通点があった。一つはPBR(株価純資産倍率)が低かったことで、TOBを仕掛けられた時の同倍率はユシロが0.75倍、ソトーが0.53倍。また共に無借金経営に近く、内部留保が潤沢、さらに着実な現金収入が見込めた一方、配当政策が不十分だった。
当時、スティール・パートナーズは2社にTOBを仕掛けた理由を対外的に説明しなかったが、TOBを通じてユシロとソトーに配当を増やさせ、社内に眠っているカネがあれば、それで自己株を消却しろと要求したのだろう。
「あの時のスティール・パートナーズの傲慢に見えた姿勢がきっかけで、日本の資本市場はアクティビストについて、企業の中長期的な成長など微塵も考えない強欲な輩と思うようになった」(大手証券会社ストラテジスト)
あれから20年。一度貼られたレッテルはなかなか剥がれないもので、日本ではなおアクティビストに負の印象が付きまとう。
実際、広い意味では同業者となるある機関投資家は「彼らと一緒にされたくない」とアクティビストを毛嫌いする。
機関投資家はアクティブ投資家とパッシブ投資家に大別される。このうちパッシブ投資家は世界の代表的な株式指標に沿って投資をするが、アクティブ投資家はこれと思った企業に投資家から預かった資金を長期間投じて高い運用パフォーマンスを実現しようとする。「アクティビストと一緒にされたくない」と公言するのは、あるアクティブファンドの日本代表だ。
「我々は『これぞ』という投資先を選ぶため会社との対話を求めます。実際の対話は建設的なもので、アクティビストのようにはなから対峙したりしない。でも相手の企業は我々がどんな対話を求めているか知りません。『お話を伺いたい』と言うと、しばしば『強欲なアクティビストが接触してきた』と勘違いして避けようとする。対話ができなければ投資なんてできません。アクティビストという存在のせいで我々は機会損失を被ることだってある。アクティビストという存在は本当に迷惑です」(外資系のアクティブ投資家幹部)