5月25日午前10時。東京・千代田区二番町にあるセブン&アイ・ホールディングス本社の1階会議室で第18回定時株主総会が始まった。出席者は昨年に比べて7割超増の436人。開催時間は3時間10分で、昨年の1時間46分を大きく上回った。

セブン&アイの取締役が退任を求められた!

 株主総会の出席者が大幅に増え、なおかつロングランとなったのは米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルが井阪隆一社長ら取締役4人の退任を求めて、株主提案をしたからだろう。

セブン&アイの株主総会 Ⓒ時事通信

 バリューアクトはアクティビスト(物言う株主)と呼ばれる投資ファンド。2021年5月までにセブン&アイの発行済み株式の4・4%を保有して大株主となり、今回初めて同社に株主提案をした。

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 井阪社長らの退任を求めたのはなぜか。株主総会を前にバリューアクトで日本株投資の責任者を務めるデイビッド・ロバート・ヘイル氏が複数のメディアのインタビューに応じており、内容を整理すると理由はおおむね3つある。

 井阪社長の経営手腕への疑問、セブン&アイのコーポレート・ガバナンスに対する不信、そしてコンビニ事業のスピンオフ(分離・独立)だ。インタビューでの主な発言を抜粋する。

〈井阪社長は、その地位に就いて7年となる。そろそろ実績を振り返って評価する時期に来ているが、野心的に大きなことを達成したり、明確なプランを推進したりしたリーダーの実績とは言えない〉(日経ビジネスオンライン5月17日)

〈井阪社長以外の取締役も、長年セブン&アイの取締役でありながら、自らが打ち出した改革を実行できていない。そればかりか決断を妨げてさえいる〉(東洋経済オンライン5月2日)

〈セブン&アイにとっても、コンビニ事業のスピンオフは企業として大きく成長する有力な手段の一つとなる〉(同前)

切り離しの議論が過熱するセブンイレブン

 結果はこうだった。井阪社長の取締役再任に対する賛成比率は76・36%。昨年の94・73%からは大幅に下がったが、取締役の選任に必要な過半数は上回った。他の3人の取締役の賛成比率は64~68%。バリューアクトはセブン&アイの経営に一石を投じたといえるかもしれないが、株主提案が通らなかったわけだから、「負けた」と言って良いだろう。