局長会は会社の人事や昇給に強い影響力を持つ。そのため局長たちは局長会に服従し、そのうえ政治活動に明け暮れなければならない。そもそも郵便局長のポストは公募制になっているが、候補者のほとんどは局長会の推薦を受けた者だという。この組織のトップが「局長の子弟が後継者として資格がある」と世襲の優遇を明言するように既得権益であり、局長会はそれを維持するための団体なのだ。
彼らの推薦を受けるには、「局長会に従順で、政治活動を頑張るとさえ言えば」よく、反対に局長会を嫌って、優秀な人材が局長にならない弊害が起きている。そうしたこともあって藤田記者の取材に日本郵便の人事担当は、局長会の推薦のない候補者を「私の経験上は採用したことがない」のだと打ち明ける。
内部通報を受け本社コンプライアンス部門が一部を漏洩
腐敗は局長会ばかりでない。内部通報を受けた本社のコンプライアンス部門は、その内容の一部を漏洩する。そのため問題の局長の父親でもある副会長は、内部通報者に報復すべく“犯人捜し”に乗り出す。「やったヤツは必ず見つけてやる」「俺に挑戦状たたきつけちょろうが」「皆さんの身の潔白を示していただかないと、私も皆さんを信用して仕事ができない」と恫喝してまわるのだ。
強固な縁故社会のなかでの善悪の倒錯ぶりに、読者はなにを思うだろうか。旧態依然の昭和な組織か、それとも……。
寝食を共にする、同じ釜の飯を食う、といった言葉があるが、組織においては、不正行為を共に励んだり、隠蔽を連帯して行ったりすることで深い絆が生まれる。以上にあげた3冊は、そうした企業腐敗の実像を描き出すと同時に、現代日本の縮図と病理を見せているように思えもする。(#2に続く)