教団から“排斥”後に発覚した、母のがん
ーーそれ以降、教会に行かずにすんだのですか。
関口 いやいや、そう簡単には。母のほうも長老を何回か家に呼んだりして、いろいろと僕を説得しようとしたけど、言ってくることが嘘くせぇなって。友達を通して世間の情報が大量に入ってきていたので、長老の話を聞いても「なに言ってんだ、この人」と冷め切っちゃっていてね。
結局、そうやって説得されてる最中に、またタバコを吸ってしまうんですけど。
ーー家で?
関口 今度は町で。それをたまたま見た信者の人が教団に告げ口したので、今度は聴聞会に来てくれって話になったんです。教会に行ったら、他の地区の長老なんかを含めた2、3人が僕を待ってるんですよ。
「町でタバコを吸っていたのは事実ですか?」「そうです」ってところからスタートして、「あなたはいま、エホバを信じてますか?」と聞かれました。「楽園に行けるとかっていう話が現実になってくれたら、母親は喜ぶだろうなとは思いますけど、自分はそんな気持ちになれない」と、けっこう堂々と答えましたね。
「あんたたちのほうが非常識だ」って顔をして話してたけど、そもそもタバコに関しては未成年だったから、吸っちゃいけないんですけどね(笑)。結果、教団からの追放にあたる“排斥”を言い渡されました。
ーー排斥されると、どうなるのですか。
関口 信者たちとの会話は一切なくなって、必要なこと以外はまったく口をきいてくれない状態になります。それは一緒に家で暮らしている母もそう。そんななか、僕が18歳のときに母のがんが発覚したんですよ。
いくら排斥された身でも、親子ですしね。入院して手術するって話になると、僕も病院にも行くし、病院側も来てくれと。だけど、病院に行くと先生と話しているのが長老なんですよ。
ーー家族じゃなくて、長老が説明を受けてしまう。
関口 母の周囲で、大人の男性といったら教会の長老しかいなかったので、その人たちが病院に行ってしまうわけです。僕も子供じゃなかったけど、18歳という年齢だから、先生も「この子と話し合っても」という感じだったんじゃないですか。誰か責任ある人が来てくれないかなということで、来たのが長老だったんでしょうね。で、先生が長老に「ご本人は輸血を拒んでいるようですが……」といった話をして。
ーー無輸血で手術というわけにはいかないですよね。
関口 結局、血液製剤を使って1度手術したのですが、それだけではよくならなかったです。かなり弱ってきていたから、僕からも1、2度、輸血を受け入れるよう説得しようとしたことがありましたけど、母は笑って「いいのいいの、お母さんが決めたことだから」と。