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 求人情報にあった月収30万円以上というのは、夜勤や残業を目一杯やって初めて達成できる金額。日勤だけで残業がなければ、手取りは13万円程度になってしまう。騙しに近い誇大広告だと思った。

「きつい仕事だったけど8ヵ月ぐらいはそこそこの収入を確保できていました。ところが減産体制になったものだから日勤だけの勤務になった。休みの多い月は諸々引かれた手取りが12万円切るぐらいに下がってしまいました」

©AFLO

 これでは満足に貯金もできない。寮の部屋には最低限の家具、家電はあったが新しい布団やテレビなどを買ったし、保険治療だが差し歯を2本作り替えたのであまり貯金を作れなかった。

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「そのうち元に戻ると期待していたのですがずっと減産が続き、約1年4ヵ月ほど働いたところで派遣打ち切りになったわけです」

 別の派遣先もなかったためあっさりと失職したという次第だ。

「そりゃ納得できませんけど、考えるのさえ嫌でした。少しずつ生活必需品を揃えていたし、新しい生活に慣れてきたところだったから」

 寮からの退去は1週間の猶予があったが、そんな短期間に次の住まいを探して契約し、引っ越しを終えるなんてどだい無理な話だった。

狭苦しいシェアハウスへ

「こういうわけで最初はウィークリーマンションに移ったんです」

 なんとしても次の仕事を見つけなければならなかったが2ヵ月経っても無職状態。

 蓄えなんて微々たるものだったから日銭の稼げる日々紹介、日払いアルバイトで凌ぐしかなかった。

「下請けの引っ越し業者、建物清掃業、内装工事業、宅配会社の臨時仕分け。こんなことを1日単位、長くても3~5日という短期でグルグル回っていたんです」

 日当は8時間労働、交通費込みで8700~8800円。仕事の紹介がまったくないこともあるから働けるのは月15~18日。月収は多くても16万円がいいところだった。

「ウィークリーマンションの料金はいちばん安い部屋だったけど週2万6000円でした。月にしたら10万円以上です。とても払いきれないからどうしようと思案していたときに、スポーツ新聞で『格安ルーム・4万円~、家電品完備、住民登録可』という広告を見つけて移ってきたわけなんです」

 保証人は不要だし敷金、保証金、礼金もない。便利なことは便利だが住宅としての環境は劣悪。ビルのワンフロアを細かく区切ってある居住スペースは4畳程度の広さ。荷物を入れる押入れや窓はない。

「家電品は共同台所に大型冷蔵庫、電子レンジ、オーブントースターなどがあるだけです」

 シャワーやトイレも共同だし、洗濯はコインランドリー方式。これで家賃は住民登録料込みで4万2000円。

「布団を敷く広さがないんです。仕方ないから冬はサウナスーツを着て寝袋に入っています。これだと身体を伸ばせないから疲れが取れませんね」

 仕事は相変わらず日々紹介や日払いアルバイト。

「やっぱり不安定ですよね。6日連続で仕事があるときもあるけど1日働いたら2日休みなんてこともあるから」