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「3、4日同じものを着ても何とも思わなくなった」生理用品まで倹約…日雇い派遣から脱出できない女性(29)の“ギリギリ生活”

『お金がありません 17人のリアル貧困生活』より #2

2023/07/06
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 今は2つの派遣会社に登録しており、求人情報はスマホにメールで届く。

「働く期間は1日単位だったり1週間単位です。1か所に固定されることはありません」

 8000円から9000円程度の日当と作業内容を天秤にかけながら明日、明後日。あるいは1週間の働く現場を決め、メールを返送する。

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「アルバイト派遣って言っているけど、やっていることは日雇いです。日雇い派遣という文言のネガティブさが嫌ですね」

 収入的にも満足できるものではない。

「まずバラツキが大きいです。日当9000円、休みは週1で、ずっと働ければ月収で22万円になります。でも現実には仕事と仕事の間に2、3日の空白があったり就労時間が短かったりすることもあるので、実際は16万円がいいところです。交通費は日当に含まれているのでほぼ1万円は出ていきますし」

 これで所得税を天引きされたら手取りは14万円と少しがやっと。ゆとりなんてありゃしない。

「職場の雰囲気ですか? 良くはないですね。変わった人もいるから」

 たまに出没するのは新興宗教の勧誘。メジャーな団体から聞いたこともない怪しげな団体まで種々雑多。

「マルチ商法みたいなことをやっている人が会員というかカモを捕まえるために入り込んでいたり、左寄りの団体に感化されている人がいたりして、閉口したこともありました。どこの職場にも少し変わった人はいますけど、日雇い派遣はそういう人の出現率が高いですね。個人的に付き合いたいという人はいません」

粗衣粗食で細々と暮らす

 暮らしぶりについては、今のところは何とか踏ん張っているという状態。

「生活に余裕はないです。家賃、水道光熱費、携帯電話代の合計で6万8000円前後になります。奨学金の返済も1万3000円あるし、国民健康保険の保険料も1万7000円。これだけで9万8000円出ていく。残った4万2、3000円でやり繰りしています」

 病気になったときに無保険では困るので国民健康保険には加入しているが、国民年金の保険料は払えないので全額免除の手続きをしている。この先、奨学金の返済ができるのかが大きな不安材料だ。

「生活信条はとにかくお金を使わないこと。1円でもケチる、これに尽きます」

 日々の買い物のほとんどは、まいばすけっと、ダイソー、ドン・キホーテで済ましている。

「お米はまいばすけっとの5キロ1380円の格安品、袋入りのインスタントラーメンやレトルトのカレー、食パンなども割安なPB商品しか買いません」

 この1年近くはまったく外食していない。ファストフード店にも入っていない。

「基本は自炊です。昨日の夕飯は冷凍保存しておいたご飯を解凍し、おかずはスーパーのタイムセールで買った2枚100円のハムカツ。付け合わせは袋入りモヤシを3分の1ぐらい湯がいて中華ドレッシングで和えたもの。インスタントの味噌汁も飲んだけどお米代込みで180円程度ですね」

 派遣の仕事場には出がけに100円ローソンでジャムパン、クリームパン、大福、おにぎりなどを2個買って昼食として持っていく。飲み物は家で淹れたお茶だけ。

「あまりにも粗末なのでコソコソ隠れて食べています」

 外でランチやディナーを楽しめる人が羨ましい。

「野菜は高いからあまり食べられません。でも野菜を食べないと身体が痒くなったり肌も荒れたりします。爪の色も悪くなるし頭皮も荒れてフケが増える……人間の身体って正直だなと思います」

©AFLO

 新鮮なトマトやレタスを食べたいが、天候が悪かったりしたらレタス1玉が300円、きゅうり1本88円なんて高値になる。とても手が出せない。