「追記欄の4行分が満載になったら、マイナンバーカードを再交付しなければならないのです。運転免許証のように追記欄にシールを張って上書きするようにはなっていません。再交付は無料ではあるのですが、顔写真を改めて撮影するなどの手間がかかります。交付までの日数もかかる。運転免許センターで即日交付される運転免許証とはかなり違います」(同前)
そうなるのを避けようとしているのに、「がっかりすることもある」という。
「追記した事項ごとに公印を押しています。小さい公印がないのか、2行にわたって押している自治体もあり、あ~あ判子だけで2行も取っちゃってと思います」(同前)
河野太郎・デジタル改革担当大臣は「判子廃止」を訴えたこともあるのに皮肉なことである。
手続きをさらに煩雑にさせるパスワードの存在
転勤族はマイナンバーカードの有効期限の10年の間に必ず再交付が発生してしまいそうだ。話を聞いた職員の中にも「私が結婚して住所や姓が変わった時には、追記の記載が4行に収まらず、カードが再交付になってしまいました」と話す人がいた。
追記欄の問題はこれだけにとどまらない。結婚だけでなく、離婚で姓が変わった場合にも記載され、見られたら相手に分かってしまう。運転免許証も同じように記載されるが、こちらは追記欄が裏にある。
「離婚歴を知られたくないし、旧姓を見るのも嫌なので、マイナンバーカードを作り直したい」という人もいるようだ。自己都合の再交付には手数料が発生し、カードの再交付が800円。電子証明書の発行手数料が200円加わるので、合計1000円もかかる。
引っ越しの手続きで多いのは、マイナンバーカードがどこにあるか分からなくなってしまった人だ。
「運転免許証と違って携帯せずにしまい込む人が多いし、それだけ日常的に使われていない証拠でしょう」と、ある自治体職員が分析する。「希望者には再交付しますが、手数料がかかるので『もういいや』と言う人もいます」。
パスワードの存在も手続きを煩雑にしている。
マイナンバーカードには通常、2種類のパスワードを設定しなければならない。カードのICチップに“格納”した2種類の電子証明書などに必要なのだ。
そのうちの一つ、「利用者証明用」の電子証明書は、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」にログインする時などに使う。ログインした「マイナポータル」でオンライン申請する場合は、もう一つの「署名用」の電子証明書を使用する。
これら電子証明書を使う際には、それぞれ異なったパスワードを入力しなければならない。「利用者証明用」は4桁の数字で、連続3回間違えるとロックされる。「署名用」は英字と数字を組み合わせた6~16文字 で、連続5回間違えるとロックされる。