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「使い道がないカードのパスワードは覚えられるわけがない」現役自治体職員が激白“ここがヘンだよマイナンバーカード”

マイナカード、自治体職員の嘆き#1

2023/07/01

genre : ニュース, 社会

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「一般の住民が市役所を訪れる機会はどれくらいあるでしょう。何年も行っていないという人が多いのではないでしょうか。にもかかわらず、マイナンバーカードの所持者は全員が5年ごとに窓口で手続きをしなければなりません。運転免許証の保有者数より多いのに、これほどの来庁を求める事業は前代未聞です」と、大きな市の職員が言う。

 ただ、「今回はマイナポイントをもらうために申請したけど、もうもらえないなら更新しない」と話す人もいるようだ。

 こうした人がいる現実に、ある市の職員が疑問を呈する。

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全ての問題点は「必然性がないままカードを作ってしまったこと」

「政府は健康保険証を廃止して、マイナンバーカードの取得を実質的に強制しようとしていますが、ならばマイナ保険証以外のカードの使い道といったら、どんなものがあるでしょう」

 窓口では「このカードは何に使うのか」と尋ねる住民もいるが、「答えに困ることもある」と本音を漏らす職員もいる。

 デジタル政策に詳しい職員の一人は、「政府は本来の目的を見失っている」と、鋭く批判する。

「国民1人1人に付与された12桁の個人番号(マイナンバー)で何ができるか。これが政策の主目的だったはずです。まずやるべきことは、12桁のマインナンバーを様々な制度に紐づけて、社会を便利にしていくことでした。

 ところが、政府は12桁のマイナンバーを活用する制度設計をしっかりとしないまま、カードを導入してしまいました。必然性がないままカードを作ったのです。カードの交付率を上げようとして2万円のマイナポイントまで付与しました。カードを作ったら何が得なのか。現状としては生活が便利になり楽になるとは認識されておらず、ポイントをもらえるという程度になっています。カードを日々使っていく場面がないのに、パスワードなんて覚えていられるはずがありません。

©AFLO

 カードを作らせるよりも、12桁のマイナンバーで何をするかが先。逆転しています。マイナンバーで便利になったから、カードも作ろうと思われるようにしなければならなかったのに……。これがパスワードが忘れられる理由です。今のままならいつまで経っても忘れられるでしょう」

「政府が人々の考えや意識、市区町村の現場の声を把握しようとせず、自分達が思ったままやろうとするから、人々の暮らしに寄り添った制度にならないのです」と力を込める職員もいた。

「使い道がないカードのパスワードは覚えられるわけがない」現役自治体職員が激白“ここがヘンだよマイナンバーカード”

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