「支所の窓口では、まずマイナンバーカードを預かって、転出に関する情報を出力して印刷します。これを確認審査して、本庁の住民課にデータをファックスします。住民基本台帳に登録された内容の変更は本庁でしかできないのです。この作業が終わると、今度は支所の窓口でマイナンバーカードの中身の更新や追記欄の印字を始めます。そんなことは住民課で住民登録を変更している間にできるじゃないかと思われるかもしれませんが、登録作業が終わってからでないと、マイナンバーカード関連の変更はできないのです。カードの更新作業はスムーズにいけば15~20分で済みますが、手続きに来た人がパスワードを忘れていたら、初期化から始めるので一定の時間がプラスになります」
これは通常時期の話だ。春の異動時期にはさらに時間がかかる。
「本庁の住民課が混雑していて、住民基本台帳の変更作業が1時間待ちとかになってしまう場合もあります。そんなに長い時間、支所で待っていただくわけにはいきません。マイナンバーカードの中身の変更や追記欄の記載は『また、後日にしましょう』ということになります。『えーっ、また来るの』と言われることもありますが、どうにもなりません。マイナンバーカードは支所で預かれないので、お返しします。こういった時、転入(転居)届を出してから90日以内にマイナンバーカードの変更手続きをしないと、カードが失効してしまいます。そうした人が実際に手続きに来たかどうかは確認していないので、もしかすると住民基本台帳の住所とマイナンバーカードの住所が異なる人がいるかもしれません。もちろんその場合、カードを使った申請などはできませんが」(同前)
「転勤が多く、マイナンバーカードの更新に時間がかかるのを知っている公務員の中には、『紙で転入届を出す』と用紙を求める人もいます」と話す職員もいた。
一方、マイナンバーカードの導入で便利になった部分もある。
逆に楽になったことは…?
引っ越しの場合、マイナポータルで手続きをすれば、住んでいた市区町村の窓口に転出届を出さずに済む。以前は紙で転出届を出し、転出証明をもらって、新しく住む自治体の窓口に提出しなければならなかったが、転入先だけの手続きでよくなった。
「これまでは、転入の手続きをしようとして『転出届を出すのを忘れていた』と青ざめる人もいました。住んでいた市区町村に帰って転出届を出すか、郵送で転出届を出すかしたうえで、転出証明を持ってきてもらわなければなりません。遠方だと大変です。これが必要なくなったのは大きいでしょうね」と、窓口担当の職員は話す。